親を扶養に入れることについてのご質問です。
私の親はいま年金生活を送っており、私とは離れて暮らしています。
今の仕事の都合上、これから実家に戻って暮らすということは考えておりませんが、その代わり定期的に仕送りを送っております。
この前知り合いから、親を扶養に入れると税金がお得になると聞きました。
なんとなく聞いたことはあるものの、具体的にはよく分かりません。
教えてください。
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2022年2月28日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
親を扶養に入れるメリットは?
以前このコーナーで、夫婦間の扶養についてお話をさせて頂きましたが、親子間でも基本的な考え方は同じです。
一定の条件を満たす親子であれば、親を子供の扶養に入れることで、税金や社会保険料の負担を減らすことができます。
ここでいう扶養には、税金の扶養と健康保険の扶養の2種類があります。
税金の扶養に該当すると、扶養する側つまり子供の税負担、具体的には所得税と住民税が軽減されます。
健康保険の扶養に該当すると、親の健康保険料の負担が無くなります。
よって両方の扶養を満たすことが出来れば、親子双方の税社会保険料を抑えることができるのでお得なんです。
ただし扶養の条件がそれぞれ異なるので、税金の扶養に入れるけれど健康保険の扶養にのは入れない、ということはよくあります。
税金上の扶養とは
次の要件を全て満たす必要があります。
1.親が子供と生計を一にしている
同居が条件ではなく、別居でも仕送りをして生活を支えている状況であればOK。
2.親の年間の合計所得が48万円以下
年収ではなくて所得、親の額面年金収入から年金控除をひいた金額が48万円以下ならOK。
年金控除額は65歳以上は110万円で60歳未満は60万円、よって額面収入に換算すると65歳以上は158万円、65歳未満は108万円以下の年金収入ならOK。
夫が先立っている場合は妻に遺族年金が支給されていますが、遺族年金はこの所得の計算には含めない、あくまで妻本人の公的年金収入が所得48万円以下が要件。
年金生活ではない親の場合、親の給与収入が103万円以下であればOK。
3.青色申告者の専業専従者としての給与を受け取っていない、または白色申告者の事業専従者ではない
以上の要件を満たすと税金上の扶養に該当するので、子供の所得税と住民税の負担が減ります。
具体的にいくら減る?
子供に扶養控除が与えられるのでその分の税負担が減るのですが、所得税と住民税で控除額が異なるため少し複雑です。
まず所得税ですが、親が70歳未満なら38万円、70歳以上で別居なら48万円、70歳以上で同居なら58万円の控除が受けられます。
この控除額に子供の税率を乗じた分の税担が減るのですが、所得税は累進課税ですから人によって税率は異なります。
一般的な会社員なら10・20・23・33%のいずれかでしょうから、先ほどの38・48・58万円のいずれかにこの税率を乗じた分の所得税が軽減されます。
例えば年収500万円なら所得税率は20%ですから、76,000円・96,000円・116,000円いずれかの所得税負担が減ります。
そして住民税にも控除があります。
親が70歳未満なら33万円、70歳以上で別居なら38万円、70歳以上で同居なら45万円の控除が受けられます。
住民税の税率は一律10%ですから、33,000円、38,000円、45,000円いずれかの住民税負担が減ります。
よって年収500万円の子供の場合、所得税と住民税の合計で、年間109,000円、134,000円、161,000円いずれかの税負担が減りますので結構メリットが大きいです。
健康保険の扶養とは
まず前提として、子供が会社員か公務員である必要があります。
自営業者の加入する国民健康保険には、扶養という概念がないので、子供が自営業者の時は利用できません。
そして親が75歳未満のときに限ります。
75歳以上は後期高齢者医療保険に加入するので、ここにも扶養という概念はありません。
その上で、親と同居の場合は次の2点を満たしていればOKです。
1.親が60歳未満なら年間収入130万円未満、60歳以上なら180万円未満
こちらは所得ではなく額面収入で見るので、遺族年金も含めます。
2.親と同居の場合は、子供の年収に対して親の年収が半分未満。別居の場合は、親の年収が子供の仕送り金額未満
以上が条件です。
税金の扶養より要件がかなり厳しいので、これを満たせる方は多くはないと思います。
そしてこの健康保険に加入できるメリットは、親の健康保険料の負担がなくなる、という点です。
所得に応じて健康保険料は異なるものの、少なくとも年間5万円ほど(健康保険の均等割部分)の負担は無くなります。
デメリットはない?
税金の扶養には特に無いですが、健康保険の扶養にはデメリットがあります。
健康保険の扶養に入っていると、親の医療費が高額になる可能性があります。
病気や怪我で治療をすると高額療養費という制度を使うことで医療費の自己負担には上限が設けられるのですが、この上限は所得により異なります。
親本人の所得は年金生活なので少ないのですが、親を子供の扶養に入れた場合は子供の所得で計算されるので、高額療養費の自己負担が高くなる可能性があります。
介護費用についても同じです。
介護保険を利用する際の自己負担jは世帯全体の所得で決まりますので、同様に自己負担が増える可能性があります。
75歳未満で介護を利用する親を持つ子供は、仮に扶養に入れられる要件を満たしているとしても、親を健康保険の扶養に入れるかは慎重に判断した方が良いと思います。
扶養についての詳しく気になる方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。