2018年の相続法の改正でどう変わる?FPが初心者にも分かりやすく解説します。

2018年相続法の改正内容 マネー情報

農地の相続についてのご質問です。

一昨年、主人の父親が亡くなったときに主人に兄弟が多いこともあり相続でかなり揉めました。
主人はいわゆる『農家の長男』で下に弟・妹が3人います。3人とも実家からは出ており実質
主人が財産のほとんどを引き継ぐことになりました。
例に漏れず『不公平だ』との声が兄弟から上がりましたが、資産のほとんどは不動産、しかもほぼ農地なので分けようにも分けづらいものでした。
生命保険や一部の土地を売却したお金で何とか収めたのですが
将来自分の子ども達は同じような目には合わせたくありません。
少しでも対策出来ないかと相続のことについていろいろと調べているとちょうど今年相続法が変わるという記事を目にしました。今までの面倒やトラブルを考慮しての改正とありましたが
内容が多くて良く分かりません。ポイントだけでも教えていただけると助かります。

小宇佐
小宇佐

私、小宇佐がお答えします!

※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2019年7月8日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。

相続に関する法律が相次いで改正されている

2015年の税制改正に始まり、昨年2018年に相続法の改正が決まり、今年2019年から順次施行されます。相続法の改正は1980年以来、約40年ぶりとなり大きな見直し内容となっています。

関連する改正内容は?

小宇佐
小宇佐

今回のご質問内容ですと、権利や財産の分割関係のところが関わっていますので、そのあたりを中心にお伝えしていきます。

遺留分

まず「遺留分」についてです。遺留分というのは、一定の法定相続人に認められる、最低限の遺産取得分のことです。

例えば、親一人、子ども二人(兄・弟)の家族で、親が亡くなった場合に遺言で兄に全ての財産を渡す、とされていたとします。この場合、弟は法定相続分の半分、つまり4分の1を遺留分として請求する権利があります。

小宇佐
小宇佐

この割合は、今回の改正で変わっていないのですが、遺留分のもらい方が大きく変わりました。

もらい方がどう変わったの?

これまでの遺留分の請求は「遺留分減殺請求」と言われてきましたが、それが「遺留分侵害請求」となりました。

例えば、相続財産が4000万円の不動産のみだとして、それを全て兄に渡すと言う遺言があった場合に、改正前は、弟が遺留分減殺請求をすると、弟の遺留分である1000万円(4000万円 × 1/2 × 1/2)は、不動産そのもので取り戻すことになっていました。

つまり4000万円の不動産の3000万円分は兄、1000万円分は弟の名義となり不動産を共有する結果となっていました。不動産の共有は後々のことを考えると不便でトラブルの種も含んでいるのであまり望ましいことではありません。

新制度(遺留分侵害請求)では、遺留分を侵害された「価額」を「金銭」で請求できる権利に変更されました。不動産の一部ではなく金銭によってもらえるようになり、先ほどの例で言うと、弟は兄に1000万円の現金を請求できます。
(被請求者の支払い能力や便宜もあるので、支払いには「相当な猶予期間」を設けることができるとされている)

1000万円も払わなきゃいけない、大変だ、という側面もあるのですが、一方で不動産を共有持ち分としなくて良くなります。

小宇佐
小宇佐

共有不動産というのは相続トラブルの元になる可能性が非常に高く、それを避けるために改正されたのではと私は考えています。

自分が被相続人になると考えたときに、自分が残す財産の内訳を見て、分けにくい不動産などの割合が多い場合は、一部の不動産や有価証券などを売却して現金を用意しておいたり、生命保険で一定の保険金が入ってくるようにしておいたりなど手を打っておくことで、そもそも遺留分の侵害を無くしたり、相続人のひとりが遺留分を請求された時でも支払う原資を確保できたりします。

特別受益

小宇佐
小宇佐

「特別受益」に関するものが2つあります。

特別受益とは、一部の相続人が、被相続人からの遺贈や(生前の)贈与によって特別に受けた利益のことです。

特別利益があった場合は、特別受益の金額を相続財産の金額に加えて相続分総額を算定します。

例えば、先ほどの親一人、子ども2人(兄、弟)の例で言うと兄が親の生前に1000万円の贈与を受け、弟は何ももらっていなかったとします。親が亡くなったときの財産が2000万円残っていたとすると、この2000万円を兄弟2人で分けるのではなく、兄が既にもらっている1000万円も相続財産に持ち戻ししなければなりません。

そうすると平等に分けるにはこの2000万円を兄500万円、弟1500万円と分けることになります(遺言がない場合)。

これが大まかな特別受益の内容ですが、この特別受益に関する規定が2つ変わりました。

特別受益の期限

改正前は期限はありませんでした。つまり何十年も前にもらった財産でも相続分の総額(=遺留分減殺請求の対象)に持ち戻しをしなければいけませんでした。

改正後は、この対象になるのは相続開始前10年間のものに限定されることになりました。

小宇佐
小宇佐

あまりに昔の贈与は、入れなくてもいいよ、忘れてもいいよ、となったのです。

結婚20年以上の夫婦間で住宅が特別受益の対象外に

もうひとつは、結婚して20年以上の夫婦間で家を配偶者に生前贈与した場合は特別受益の対象外となることになりました。

家を生前贈与しておくことで、死後に遺産分割協議をするときでも、配偶者の遺産取得分が減らされることは無くなりました。

現場感覚で法整備がされている

今回の改正内容は他にもいくつかありますが、おっしゃるように「現場感覚」で改正されたものが多いような気がします。

小宇佐
小宇佐

遺言書の作成や保管についての改善だったり、配偶者が家に住み続けられるように考慮されていたり、介護をしてくれた息子の嫁の権利まで考えてくれるような良い改正だと思いますので、また機会があればお伝えしていきます。

相続について、お悩みがございましたら小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。

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小宇佐 拓宏

小宇佐・針田FP事務所代表ファイナンシャルプランナー。住宅マネープランナー協会代表。2001年早稲田大学人間科学部卒業後、マンションデベロッパー・損保系大手生命保険会社での経験を経て2010年小宇佐FP事務所として独立。2011年小宇佐・針田FP事務所に名称変更専門分野は投資・運用。自らもFXや米国株投資を積極的に行う。

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