相続税の税務調査がされるのはどんな場合?FPが5つのケースを解説します。

相続税の税務調査がされるのはどんな場合?FPが5つのケースを解説します。 マネー情報

60代女性の方からのご質問です。

相続対策として子供たちへの贈与を考えています。いろいろと調べる中で、ふと疑問に思ったのですが、贈与って税務署はどうやって把握するのでしょうか?相続税の税務調査などでは、詳しく調べられると聞いたことがありますが、それ以外で税務署に贈与したことが分かる場合ってあるんでしょうか?
別に変なことをするつもりはありませんが、気になりますので教えていただけないでしょうか?

小宇佐
小宇佐

私、小宇佐がお答えします!

※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2020年10月12日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。

贈与税の税務調査ってあるんでしょうか?

小宇佐
小宇佐

税務署は贈与税に関しては、調査を行っていません。

そもそも贈与税は相続税の補完税と言われています。

もし贈与税がなければ、相続税が掛かるような方はどんどん子供や孫に財産を贈与してしまいますよね。

これを防止するために贈与税はあります。

税務署が贈与税の調査を行わないのは、相続税が発生した時点で過去の贈与が分かれば良い、という考えに加え、調べようと思えば遡ってかなり正確に調べられるからです。

では、将来相続税が掛からるような財産が無い家庭では親子間などで、どんなお金のやり取りを行なっても大丈夫か?と言うと、当然そうではありません。

税務署は贈与税に関しての調査「自体」は行なっていませんが、様々な方面から個人の間で贈与が行われた「情報」が入ってきます。

どこからどんな情報が入ってくる?

小宇佐
小宇佐

5つほどありますので、順番にお話ししますね。

①住宅購入に伴い登記を行ったとき

例えば、3000万円のマンションを購入するにあたって夫が1500万円、妻が1500万円出したとします。(現金でもローンでも考え方は同じ)

このときに、住宅の登記をお金を出した割合、夫2分の1、妻2分の1としていれば、何も問題はありませんが、持ち分を100%夫として登記をしてしまうと、妻から夫への贈与となり、登記をきっかけとして税務署もこの贈与を把握することになります。

これがなぜ分かるかと言うと、不動産登記を行うと、税務署は、誰々が不動産を購入した、誰々が登記を行なった、と言う情報を法務局から手に入れます。

そこで実態が掴まれ、税務署から「お買い入れになった資産の買い入れ価格などについてのお尋ね」という文書が、不動産の名義人の元に送られてきます。

この文書で色々なことを尋ねられますが(年齢・職業・所得、買入価格、登記費用・仲介手数料、支払金額の調達方法)
その中の職業・所得や支払金額の調達方法の情報から、家庭内における贈与の実態を掴みます。

例えば、先ほどの例と同じく、夫婦で3000万円のマンションを共同で購入、お互いに持ち分2分の1ずつで不動産登記を行なったとします。

この情報を税務署が法務局から入手し、購入者に対して先ほどの「お尋ね」の文書を送付します。

税務署はこの時点ですでにこの妻が専業主婦であることを夫の所得税の申告書の内容で把握しています。

ですから税務署は、専業主婦である妻がどうやってマンションの購入資金を支払ったのか?という部分を解明するために「お尋ね」文書を送ります。

その際に、例えば、5年前に父から2000万円の預金を相続し、そこから今回のマンションの購入資金を出した、とか、自分が独身時代に働いて貯金していた、自分の預金のお金を使った、などが「お尋ね」文書の回答で明確になっていれば、税務署は合理性があると認めます。

合理性のある回答ができない場合は、「具体的な資金の調達方法が分からない専業主婦の妻がマンション購入資金として1500万円も出せるのはおかしい」、「後日、説明を聞くので税務署に来てください」という通知が届くことになります。

②住宅ローンの控除手続き

住宅ローンを組んだ後、住宅ローン控除の手続きを行なうにあたり、初年度は確定申告を行ないます。

その際に、不動産の登記事項証明書や住宅ローンの年末残高証明書を税務署に提出します。

ここで先ほどと同じように購入金額と登記の持分割合と住宅ローンの名義の割合が不自然に違っていると、その差額は贈与とみなされ、贈与税が課せられることになります。

③生命保険の受け取り

そもそも生命保険を受け取る際の税金は、契約形態によって相続税になるのか、贈与税になるのか、所得税になるのかが変わってきます。

保険金に贈与税が掛かる場合の契約形態の例として以下のようにバラバラの場合があります。

  • 契約者(保険料を出す人):妻
  • 被保険者(保険の対象者):夫
  • 保険金受取人:子

この場合、夫がもしなくなった場合に支払われる保険金は、妻から子への贈与となり、金額によっては贈与税が掛かります。(例:1500万円の保険金であれば366万円の贈与税)

なぜこの内容を税務署が把握できるかと言うと保険金が支払われる場合は、保険会社から税務署に対して支払調書として情報が流れます。

その上で子供が贈与税の申告と納税を行なっていないと分かれば税務署が動くこととなります。

④金地金(きんじがね)の取引

小宇佐
小宇佐

実は以前は、金地金やプラチナの譲渡所得の申告漏れが横行していました。

そのため、2012年からは、200万円を超える金地金やプラチナ、金貨を売却または交換した際には、金の販売店等は税務署に対し支払調書を提出しなければならなくなりました。

この支払調書には取引した人の氏名、住所、マイナンバーや取引量、金額なども記載されているので、不自然だったり、不相応だと思われる取引を把握し、贈与税の申告や納税などがされていなければ、「呼び出して話を聞こう」ということになります。

⑤第三者からの投書・通報

小宇佐
小宇佐

現金の贈与でも第三者からの投書や通報があれば税務署にバレる可能性があります。

税務署は親子間、夫婦間や友人知人間の個人的な贈与に関しては、調査を行っていません。

税務署の人員的にも、全ての個人間の贈与を把握するなんて不可能です。

しかし、現金の贈与だからバレないという保証があるわけではありません。

(恐ろしいことに)税務調査を行なうかどうかの選定は、税務署に舞い込む「投書」がキッカケに行われることがあります。(税務署内では「投げ」と言われるそうです)

例えば以下のような、身内や内部の者しか知り得ない詳しい情報が当初されることもあるようです。

  • 「〇〇さんが相続財産の一部を申告せずに隠し持っている」
  • 「〇〇さんがお金をもらったけど贈与税を払っていない」
  • 「兄は亡くなった親のお金を取り込んでいる!調べてください!」

税務署はこのような詳しい内容の投書や通報があると、確実に調査対象にします。

もしこう言った内容が本当だとした場合に、それを見過ごしていると「バレなければ大丈夫だ。マジメに税金を払うなんてバカらしい」と思う人が増え正しく税金を徴収できなくなり、引いては、国の財政悪化に繋がるからです。

なので、税務署は投書や通報を決して軽くは取り扱いません。

特に相続発生後というのは、相続人やその家族も巻き込み、感情的なトラブルになることも多くあります。

不公平に感じている人や、憎しみなども相まって、過去の贈与の情報を税務署に提供される可能性は決してゼロではないと思います。

後から税務署にバレたらどうなる?

小宇佐
小宇佐

税務署にバレると贈与税だけではなく、無申告加算税と延滞税が掛かってきます。

この2つの税は、ペナルティ的な意味合いもあり、決して安くはありませんので、結果として通常よりも多大な税金を払うことになります。

では、贈与はやめたほうが良いかと言うと、決してそんなことはなく、正しい知識を持ち、正しい方法で行えば、相続税の節税対策にもなりますし、子供や孫の世代が有効にお金を使えて助かるし、経済も回ります。

とても有益なことだと思いますので、分からなければ専門家の助けも受けながら活用されることをオススメします。

税務調査や相続のお悩みについて、詳しく知りたい方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。

小宇佐・針田FP事務所への問い合わせはこちら

【補足情報】

「無申告加算税」

納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額

「延滞税」

(1) 納期限(注2)の翌日から2月を経過する日まで
原則として年「7.3%」 ※実際は特例もあり2~5%程度

(2) 納期限の翌日から2月を経過した日以後
原則として年「14.6%」 ※実際は特例もあり8~9%程度

小宇佐 拓宏

小宇佐・針田FP事務所代表ファイナンシャルプランナー。住宅マネープランナー協会代表。2001年早稲田大学人間科学部卒業後、マンションデベロッパー・損保系大手生命保険会社での経験を経て2010年小宇佐FP事務所として独立。2011年小宇佐・針田FP事務所に名称変更専門分野は投資・運用。自らもFXや米国株投資を積極的に行う。

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