30代男性の方からのご質問です。
このコロナの状況の中で会社員である私の働き方も大きく変わりました。一週間の内、ほとんどが自宅でのリモートワークになり、制限はあるものの副業も許可されています。おそらく今後もこのまま続くと思います。
そうすると今までの価値観も変わり、定年まで会社勤めしなくても何とか生きていけるんじゃないかと考えています。
アメリカなどでも「FIRE(ファイア)」と呼ばれる早期リタイアが流行っていると聞きました。
どのようなものか、日本で行うのは可能なのかどうか、興味があるので教えていただけないでしょうか
私、小宇佐がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2021年2月22日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
FIRE(ファイア)とは
FIREとは「Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職)」の頭文字で、「早期退職して、お金のためだけに働く縛りから自分を解放する」というライフプランや概念を指します。
早期退職とか早期リタイアとの違いは?
「お金の縛りがない」と言うと富裕層だけが実現できる悠々自適の生活のようなイメージを持つ方もおられると思います。
例えば、ビジネスで成功したり多額の遺残相続をしたりといった特定の人だけがなしえる生活、となりますが、これだと日本でも従来から持たれている早期リタイアのイメージと変わらないですよね。
FIREを実践している人達は、毎年の生活費を賄えるような貯蓄と節約を意識しながら、リタイア後も投資などの収益を得ることで、経済的自立を実現しています。
収益は、投資に限らず、例えば自分の好きな副業をしながら収入を得てもいいし、週に1〜2日だけ短時間好きな仕事をする、といったいろいろなタイプの実践者がいるようです。
「経済的自立」=「働かない」では無いという考え方が特徴のひとつと言えます。
FIREの実践者は倹約的な人が多い
FIRE自体は元々アメリカで始まり、今ではヨーロッパも含めてグローバルに広がっています。
どこの国でもFIREを目指したり実践したりしている世代は、20〜30代(ミレニアル世代と言われる2000年代に成人や社会人になる世代)が中心であるようです。
その世代は、大量生産、大量消費を当たり前と思っておらず、マイホームやマイカーなどにも強い憧れを持っていない、従来の価値観にとらわれない世代と言え、これは日本に限らず世界中に見られる傾向のようです。
つまり、贅沢な生活を目指していない世代なので、そもそも既に倹約的な生活をしている人達が多いと言えます。
どのくらいの貯蓄額で実現できる?
アメリカでの例になりますが、FIREを実践している人達の間で必要な貯蓄額とされている基準が「年間支出の25倍」です。これは年齢に関わらず共通の指標となっています。
25年の生活費しかカバーできていなくて大丈夫なの?と思う方もいるかも知れませんが、この貯蓄額は「投資元本」と言えます。
リタイア後はここからの収益をベースに支出を補っていくことになるので、原則元本は目減りしていかないとされています。
ただこれはアメリカのインフレ率や株式市場の成長率を前提とした試算であるので、必ずしも日本に住んでいる方に当てはまるわけではありません。
この考え方の前提となるのが、生活費を投資元本の4%におさめることが出来れば、試算を目減りさせることなく暮らしていける、という計算です。
アメリカの株式市場がこれまで年間平均7%の成長率を続けてきたこと、インフレ率がおおよそ3%であることが考慮されて差し引き4%となっています。
日本で実践するには
日本だとインフレ率は現在は低いですよね。当面は1〜2%と見ておけば良いと思います。
運用の方は、日本の株式市場の成長率は平均すると近年ではアメリカよりも随分低くなりますが、別に日本だけで運用する必要はありません。
今はいろいろな方法で日本からアメリカ市場や世界市場に投資することが可能です。
仮に運用の平均が5〜6%だったとしてもインフレ率が1%程度であれば、アメリカでの条件と同等かそれより少し楽かも、という計算になります。
ただそれでも、日本の1世帯あたりの平均支出額は月約25万円、年間にすると約300万円なので、4%の設定でも元本は7500万円必要、5%だとしても元本6000万円必要、となります。
FIREの考え方が今までと違うのは、お金持ちになることがゴールになるのではなく、あくまで豊かな人生を楽しむことが目標とされています。
豊かさの定義はそれぞれですが、必ずしも1億円を40歳までに貯めて引退する、といった凝り固まった目標が設定されているわけではありません。
例えば、自分の趣味を生かした副業で月に10万円稼ぐことが出来たとします。そうすると投資収益から必要な金額は、毎月15万円、年間で180万円となり4%の運用率でも4500万円の元本と考えられます。
月に15万円稼ぐことが出来れば、同じ計算で元本は3000万円となります。
働かないことが目的ではなく、今までのような過剰な消費のために貴重な時間を労働に充てたくない、自分でコントロールして人生設計をしたい、といのが実践者の共通認識のようです。
消費を抑えて必死に働かない生活を送ることが目的
なるほど。悠々自適の引退生活というよりは、自分を殺してまで必死に働かなくても生きられるんじゃないか、という価値観ですね。
実際に実践するためには、以下のことを行いましょう。
- 早い段階からの貯蓄と投資、特にある程度運用益が見込める長期投資を行うこと
- もうひとつは適正な生活水準を考えてみる
カツカツの生活では長続きしないので、固定概念を捨てて本当に必要な質の支出か、を考えてみること、この2つを行うだけでも目標に近づいていくことが実感できると思います。
20〜30代でなくても実践できますし、結婚されている方はご夫婦で話し合って取り組むことが出来れば共通の目標が持てるのではないかと思います。
人間が人生の最期に後悔することは「自分自身に正直な人生を送るべきだった」ということと「あれほど一生懸命に働かなければ良かった」の2つだそうです。
働くことが悪いことではありませんが、ひと昔前に比べると働き方や生き方は自分で選べる時代にはなっていますので、その為にも頭を使ってしっかり考えることがより重要になってきていると感じますね。
お金の運用の仕方について、詳しく知りたい方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。