65歳男性の方からのご質問です。
うちには、代々引き継いできた不動産があり、物件数も多いので相続のたびに揉めています。私の年齢を考えるとまだ少し早いとは思いますが、念の為に遺言書を書いておこうと思います。内容はほぼ決まっているので問題は無いと考えていますが、今年の7月から遺言書の保管制度が始まると言う話を聞きました。今までとどう違うのか、その仕組を詳しく教えていただけないでしょうか?
私、小宇佐がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2020年2月17日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
遺言書には3種類ある
「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つですが、この内「秘密証書遺言」は、ほとんど使われることがないので、今日は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の違いをお伝えしていきます。
保管制度が変わるのは?
自筆証書遺言の保管制度が変わります。
公正証書遺言は、今の制度でも原本を公証役場が保管することになっています。
自筆証書遺言は、専門家に依頼せずに費用も基本ゼロで作成出来る反面、問題も多くありました。
自筆証書遺言の問題とは?
作成に関して細かな決まりが多く、せっかく書いても不備があると法的に無効になっていました。
例えば、日付を明記すること。2月吉日などの日付では無効になります。
また、全文自筆である必要があります。2019年1月の改正で、財産目録はパソコンなどで作成したり、通帳のコピーを使用しても良くなりましたが、それらも1枚1枚、遺言者本人の署名・押印が必要です(これも忘れると無効)。
そして、最大のデメリットが、遺言書が発見されないということでした。
遺言書を書いて、すごく分かりやすい所に保管しておく人は少ないですよね?
10年20年経ってから仏壇や金庫の奥からおじいちゃんの遺言書が出て来た、なんて話も実際に結構聞きます。
また保管状況がそのような感じだと、遺言書を隠されたり、破棄されたり、場合によっては書き換えられる可能性もありました。
もう一つ、自筆証書遺言は、家族や相続人が勝手に開けてはダメで、家庭裁判所で「検認」してもらう必要があります。
「検認」とは、遺言書の形式や日付・署名・押印を確認し、変造や偽造されていないかどうかを確かめるための手続きです。
ちなみに、検認をしたとしても、内容に不備があれば遺言書は有効にならないので注意が必要です。
2020年7月10日から始まる保管制度とは
自筆証書遺言を法務局に持ち込んで保管してもらえるようになります。
全国に416ある法務局のうち300以上で申請を受け付ける予定とのことです。
単に保管するだけではなく、有効なサポートもしてもらえるようになるようです。
サポートの内容は?
まず、申請をする際に担当官(遺言書保管官)が遺言に目を通し、書式通り正確に書かれているかどうかをチェックします。このときに間違いがあれば修正すれば良いので不備を防ぐことが出来ます。
次に、原本を保管するとともに画像データとしても残してくれます。本人が亡くなった後に遺族が請求すると、画像データが担当感の証明付きで印刷され、遺言の証明書として交付されます。請求した人以外の他の相続人には通知が行くとされています。
証明書のカタチでもらえるので、先ほどご説明した面倒な「検認」の手続きが不要になります。相続人が遺言書の保管を知らされていなかった場合でも、法務局に問い合わせれば確認してもらうことも出来ます。
保管制度を利用する注意点はある?
保管制度の利用には費用が掛かります。詳細は未定ですが保管料として数千円、証明書交付に1通あたり数百円掛かる見込みです。
ただ公正証書遺言の作成には数万円掛かるので、比べるとコストはかなり安いと思います。
また、保管制度の申請には必ず本人が法務局に出向く必要があります。代理人による申請は出来ません。
もし病気などで出歩けない場合は、この制度は使えないので、公証人に家に来てもらって公正証書遺言を作成する方が良いです。
この制度は、7月10日から始まりますが、それ以前に書いた遺言書でも受け付けてくれるので、是非利用することをおすすめします。
遺言書や相続について、詳しく知りたい方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。