定年退職した男性の方からのご質問です。
職場で年末調整の季節になりましたが、昨年(前年度)退職してこれからは自分で手続きをすることになります。確定申告をして保険や医療費控除をする…でいいのでしょうか!?収入は年金だけですが、年金生活者も『確定申告』は毎年しなければいけないのでしょうか!?退職一年生にご教示ください。
私、小宇佐がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2019年12月2日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
収入が年金のみの場合、確定申告は必要?
年金受給者には「確定申告不要制度」が用意されています。
この制度によって、多くの年金受給者が確定申告をしなくても済むようになっています。
この確定申告不要制度の対象者は、次の2つの条件の両方を満たす場合です。
1つ目は、公的年金等(老齢基礎年金、老齢厚生年金、企業年金、恩給など)の収入金額の合計額が400万円以下で、且つこれらの公的年金等の全てが源泉徴収の対象となっていること。
2つ目が、公的年金以外の所得金額(給与所得、一時所得、不動産所得、株式などの譲渡所得、公的年金以外の雑所得など)の合計が20万円以下であること。
基礎年金や厚生年金だけで1つ目を満たす人はほとんどいません。現役時の収入が高く、企業年金もかなり良い額をもらえる方だとそういう人もいるかな、というレベルです。
公的年金以外の所得金額が年間20万円以下の条件が対象になりやすい
所得の種類としては、アルバイト収入は給与所得や雑所得、株式などの投資収入は譲渡所得や雑所得、家賃収入は不動産所得に該当しますし、個人年金保険の受取金は、毎年受け取る(年金)タイプなら雑所得、一時金として受け取るなら一時所得の対象です。
「収入」ではなく「所得」なので、控除や必要経費などを引いた後の金額ではありますが、この合計額が年間20万円を超え確定申告が必要になるケースは、結構多いんじゃないでしょうか。
確定申告が必要かどうか、判断の目安は?
毎年1〜2月になると、日本年金機構や企業年金の管理者などから「〇〇年分 公的年金等の源泉徴収票」という確定申告向けの書類が年金受給者に送られてきます。その中の「支払金額欄」の金額が400万円以下かどうかをチェックします。
企業年金などをもらっていて公的年金等の源泉徴収票が複数ある場合は、その全ての合計額になります。
次に、自分の公的年金以外の収入を把握する必要があります。所得の種類ごとに所得金額を計算し、合計額が20万円以下であればふたつ目の条件をクリアします。
今どき現金手渡しの収入も少ないと思いますので、通帳を見返すと良いかも知れません。
控除を受けたい場合も確定申告が必要
各種控除は具体的には以下のものがあります。
- 医療費を多く支払っているので、医療費控除を受ける場合
- 社会保険料控除や生命保険料控除、地震保険料控除などを受ける場合
- 災害や盗難などの損失について雑損控除を受ける場合
- 寄附金控除を受ける場合
- 住宅ローン控除を受ける場合
- 扶養親族等の人数や状況に変更があった場合
項目がたくさんあるため申告漏れに注意!
社会保険料控除や生命保険料・地震保険料控除、住宅ローン控除などは、各関連機関から書類が送られて来ます。
しかし、医療費控除や雑損控除、寄附金控除などは自己申告の性質が強いので、忘れないように注意しなければなりません。
医療費控除は、年間10万円以上
医療費控除は原則10万円以上の「超えた金額」を所得控除できるものです。
しかし、所得金額が比較的少ない年金受給者の場合、医療費の自己負担が「(所得金額+申告分離課税の所得)✕0.05」よりも多ければ、10万円以下でも(医療費控除を)受けることが出来ます。(例:150万円であれば、7万5千円以上)
平成29年分の確定申告から領収書提出はしなくて良くなりましたが、代わりに「医療費控除の明細書」を記入、提出する必要があるので、領収書は捨ててはダメですね。
「ふるさと納税」も寄付金控除に
「ふるさと納税」も寄付金控除になります。
ただ2015年4月1日以降は「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告せずに寄付金控除を受けることが可能になりました。
受ける控除がふるさと納税の寄付金控除だけの場合は、これを利用することで確定申告が不要になるので、忘れないようにした方が良いですね。
他に気を付けることは?
自然災害で雑損控除が受けられます。
近年、自然災害による被害が多くなっています。被害を受けた場合は、損失額に応じて雑損控除が受けられます。
この損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以降3年間を限度に繰り越して、各年の所得金額から控除することが出来ますので、対象の方は是非利用してください。
退職後の確定申告や資産運用について、詳しく知りたい方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。