50代男性からのご質問です。
相続のことについて教えてください。
2か月前に母が亡くなりました。父は数年前に他界しているので実家の家土地を含めて財産は子ども3人で相続することになります。
3人ともそれぞれ持ち家があるので名残惜しいですが実家は売却しようと考えています。
そんな中で買ってくれそうな人が現れましたが、売却を進めるためには名義を変更する必要があるとのことです。
まだ財産全体の把握もできていないし、誰が何を相続するかも決まっていません。
このような状態で誰かに名義変更して売却しても問題ないのでしょうか?
私、小宇佐がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2022年4月25日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
財産の分け方が決まる前に名義変更して売却できる?
できますね。相続人が複数いる場合は、被相続人が亡くなった時に持っている権利義務(遺産)は、全ての相続人の共有となります(民法898条)。
この共同相続の状態にある相続人を「共同相続人」と言います。
(共同相続状態は、遺産分割をすることでそれぞれの相続人のものになり解消されます)
共同相続人全員が合意することで遺産分割が完全に終わる前でも不動産などの財産を売却したりすることができます。
売却で得たお金は遺産分割協議の対象としないのであれば、相続人が持ち分に応じて分けることになります。
これとは別の売却方法もあります。
遺産分割協議書は財産ごとにつくる
実は、遺産分割協議書は財産ごとにつくることができます。
実家不動産を誰が相続するか決まっているもしくは合意している場合は、先に実家の分の遺産分割協議書を作成して子供の誰か(ひとりまたは複数でも可)が相続し、名義変更、売却を進めることができます。
相続発生後、どのタイミングでできる?
相続発生、つまり亡くなった後、(原則7日以内に)死亡届を役所に提出しますが、提出後1週間から10日で戸籍謄本(または除籍謄本)に被相続人の死亡事実が記載されます。
記載されれば、遺産分割協議等進められますので、そう考えると結構早い段階から売却等できることになりますね。
先に一部の財産を売却する場合の注意点は?
やはりどれくらいどのような財産があるのか、全体像が分からない段階では、名義変更や売却は本当は避けた方が良いです。
相続人が受け継ぐ遺産のバランスが取れずに極端に不公平な状態になり、トラブルの原因になったり、本来は使えるはずだった税制の特例が使えなくなることも考えられます。
相続に関する税制特例はうまく使うと相続税を大幅に減らすことができる可能性があるので、本来使えるのに使えなくなった場合は、全員が損をしてしまうことになりかねません。
例えば「小規模宅地の評価減の特例」と言って一定の相続人が受け取れば、自宅の土地の評価が330平米まで80%減で評価されるというものがあります。もし自宅(実家)の土地の評価額が2000万円だとすると、この特例が適用できれば400万円の評価となります。
これだけ少なくなると相続税の額にも大きく関わってくる可能性が高いですよね。
これを特例が適用されない人が引き継いだり、先に共同名義で売却したりすると高い評価のまま相続税が算出されることになってしまいます。
また後から想定していなかった財産が出てくることも良くありますが、その出てくる財産がプラスの財産ばかりとは限りません。
マイナスの財産、つまり債務=借金等が出てくるとプラスの財産だけのときに比べ、分け方で揉めることになるかもしれません。
一部の財産でも相続した場合は、当然相続放棄(3か月以内)もできなくなります。
ですので、先に財産の売却を進めたい場合は、全体の財産の把握や分け方をどうするかの話し合いも急ぎ進めるべきです。
どのようなときに早く名義変更や売却をした方がいい?
売却に関しては、今回のご質問のようにタイミング良く売りたい場合だったり、売ったお金を納税資金にあてたい場合なども考えられます。
名義変更については、例えばアパートや駐車場などの収益不動産があり、誰が引き継ぐかが決まっている場合は名義を早めに変えることで契約手続き、修繕や各種支払いなどがスムーズに行えます。
また亡くなられた方が会社経営などをしていた場合は、自社株を早めに後継者に相続し名義を明確にすることで経営の安定につながる効果があります。
これらのメリットと財産の把握状況、遺産分割の話し合いの状況などを踏まえた上で進めるようにしてください。
遺産相続や分割についてのご相談は小宇佐・針田FP事務所にお任せください。