60代男性からのご質問です。
よく『相続対策で生命保険を活用する』、という言葉を目にしますが具体的にどのようなものに入れば良いかよく分かりません。
私自身の相続を考えると家や土地と他の財産も合わせると相続税は必ず掛かるであろうという金額になります。
妻と2人の子供が相続人となるので分け方や税金の面でどのような保険に入っておけば役に立つのか教えていただけないでしょうか?
私、小宇佐がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2022年2月21日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
生命保険を相続で活用するには
生命保険はうまく活用すると相続対策としてのメリットはとても多いと思います。
いろいろな役立ち方があるので順番にお伝えしていきます。
まずここで言う生命保険とは死亡保障のことで医療保険やガン保険ではありませんので混同しないよう注意してください。
死亡保障の場合は、保険に加入するときに「受取人」を設定します。
一般的には、配偶者や子供にしていることが多いと思います。
受取人に指定する
ひとつめの活用法は、この受取人についてです。
受取人は、とても強い権利を持っていて、万一のときの死亡保険金は、指定された受取人が「必ず」もらえます。
相続に絡めて言いますと、例えこの受取人の方が相続放棄をしたとしても死亡保険金は受け取ることができます。
生命保険に入って受取人に指定しておくと必ずその人に渡せますので、特定の人に現金を残したい場合はとても有効です。
受取人は、誰でも指定できる?
さすがにそういう訳ではなく、原則2親等以内の親族です。
2親等ですので、兄弟や孫なども含まれます。
ただし、保険会社によってそれ以外も認められるケースもあります。
例えば、息子の奥さん(お嫁さん)や内縁関係の配偶者、近年では同性パートナーも認める保険会社も出てきました(証明書類等は必要)。
ただ友達や会社の同僚などあまりにかけ離れている人は受取人にできません。
また受取人は複数指定できるので、例えば妻50% 、子供50%などの設定もできます。
受取人を設定していない場合や受取人が死亡している場合は「法定相続人」が受取人となります。
常識的な親族などの範囲であれば、必ず財産を渡せるということですね。
保険金をもらった人はもらえる財産を減らされる?
死亡保険金は、遺産分割協議の対象とならないので、保険金の分を除いたうえで残りの財産を相続人で分け合う、というカタチになります。
これが2つ目のメリットというか特徴です。
保険でもらった分は、相続財産に入れなくても良いってことですね。
相続税は掛かる
死亡保険金は「みなし相続財産」と言って亡くなった方(被相続人)の持っている財産ではないけど、相続税の計算をする上では財産に含めることになっています。
ただし一定の非課税枠があります。
非課税枠を利用した活用法
500万円×法定相続人の人数の分が非課税となるので、相談者の方の場合は相続人3人なので1500万円までであれば死亡保険金でもらった分は非課税となります。
それをオーバーした額は通常の相続財産として相続税が計算されます。
この死亡保険金の非課税枠も生命保険の活用法のひとつと言えます。
具体的な活用法は?
相続税が掛かるご家庭の場合だとこの非課税枠の範囲内であれば、現金で持つよりも保険で持った方が税金面では良いということになります。
そもそも法定相続人が3人の場合だと、4800万円までは相続税は掛かりませんが、それをオーバーするとその額に対しては課税されます。
例えば、財産の総額が6000万円だとすると4800万円をオーバーした分の1200万円に相続税が掛かってきます。
この1200万円を仮に保険に置き換えられるとすると、相続税は掛からなくなります。
現金をそのまま保険に置き換える
一時払いの終身保険に入る、という方法があります。
これは保険料として支払った額とほぼ同額の死亡保障の終身保険で、通常であればメリットは少ないですが、相続対策としてはかなり有効です。
持っている現金をほぼそのまま保険に置き換えることで一定額まで相続財産から省くことができ、受取人を指定することで遺言書などが無くても渡したい人に渡せるので、うまく活用すれば財産分割の面でも税対策の面でも大きなメリットとなります。
注意点は?
財産の総額に対して保険金が過剰に多すぎると受取人の財産として全額認められないことがあります。
例えば財産が現金5000万円だとして、その内4000万円を一時払いの終身保険にして特定の受取人に渡そうとしても相続人同士が争い、裁判等になると認められません。
明確に何%以上だからダメとは決められていませんが、判例を見ていると半分くらいが限度かな、と思います。
法定相続人の人数などで違ってくるので相続対策で保険加入を考える場合は、小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。