「相続欠格・廃除」についてのご質問です。
相続について質問です。
相続放棄以外で相続の権利がなくなることってあるんでしょうか?
重大な犯罪を起こすと親などの財産を相続することができなくなると聞いたことがあります。この場合、どの程度の犯罪だと相続の権利がなくなるのでしょうか?また犯罪以外で相続の権利を失うことってあるんでしょうか?
今後遺言書を作成するにあたって知っておきたいので教えていただけないでしょうか。
私、小宇佐がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2021年5月24日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
相続の権利を失うのはどんな場合?
相続放棄以外で相続の権利を失うのは「相続欠格」と「相続廃除」の2つのケースがあります。
犯罪などで相続の権利を失うのは一般的に「相続欠格」の方ですが、その欠格の事由(理由)は民法で定められていて大きく分けると
- 被相続人や他の相続人に対して殺害などの危害を加えた場合と
- 遺言書を自身の有利な内容・状態にする行為があった場合
があります。
殺害などの危害についてもう少し詳しく言いますと、相続人が故意に被相続人を殺害または殺害しようとして殺人罪・殺人未遂罪などで有罪判決が確定した場合です。これは被相続人だけでなく(先順位・同順位の)他の相続人に対して同様のことを行なった場合も該当します。
もうひとつ、被相続人が殺害された場合に、その犯人を知っているにもかかわらず告発・告訴をしなかった場合です。(是非の分別がない未成年や、犯人が自身の配偶者・父母・子・孫などの直系親族の場合は該当しない)
ドラマみたいですけど、財産目的に殺害しようとしても財産は手に入らないと言うことですね。
遺言書に何をすると欠格の理由になる?
詐欺や脅迫によって遺言書を作成・変更・撤回・妨害させたり、反対に作成や変更しようとしているのを妨害したりした場合や相続人自身で遺言書自体を偽造・変造・破棄・隠匿した場合です。
無理矢理もしくは騙して遺言書を書かせたり変更させたりしてははダメですし、見つけた遺言書を都合が悪いからと言って隠したり捨てたりしてもダメで、そのようなことをした人は相続権を失うということですね。
例えば、遺言書にその相続欠格となった人に財産をあげる、と書いてあった場合でも貰えなくなる?
欠格事由に該当すると、民法で定められている通り「当然に」相続人となることができなくなります。国が権利を奪うカタチになります。
この場合、財産を相続する権利や一定割合の財産を相続する権利である遺留分も失いますし、遺言による「遺贈」によって財産を受け取ることもできなくなります。(ただし欠格者となったことが分かった後で書かれた遺言書で欠格者への遺贈が有効になるケースも稀にある)
欠格ともうひとつは廃除でしたっけ?
そうです。相続廃除とは、被相続人の立場で相続権を持っている人を相続から外すことができる制度です。
「自分が死んでも、この人物にだけは財産を渡したくない」と考えた場合に有効です。
といっても、誰でも自由に廃除できるわけではなく、一定の条件を満たさなければなりません。
条件とは?
被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたとき、又は(推定)相続人にその他の著しい非行があったとき、とされています。
更にこれを家庭裁判所に申し立てをして認められれば、相続から廃除して相続権を失わせることが可能となります。
また遺言書に誰かを廃除するように書いておいて死後に遺言執行者に申し立てを行なってもらう「遺言廃除」も可能です。
対象となるのは被相続人本人だけ?
例えば、「父の財産を、仲の悪い兄には渡したくないので、弟である自分が相続廃除を申し立てる」ということはできません。
もしその兄が本当にひどいことをしていた場合は、父親本人に廃除を申し立ててもらう必要があります。
廃除は、相続欠格と違って取り消すこともできます。
相続欠格は国が相続権を奪うので復活することはありませんが、相続廃除は被相続人が良いと思えば許してあげることができます(宥恕と言う)。
その際も家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
欠格者や廃除者がいる場合に相続手続きをする上などで気を付けることは?
欠格者や廃除者がいる場合は、法定相続人もその分減ることになります。
例えば相続人が妻と子供2人だった場合、通常だと法定相続人は3人ですが、この内子供のひとりが欠格者になると、法定相続人は妻ともうひとりの子供だけとなり、2人に減ります。
ただし、相続欠格者に子などがいる場合は、代襲相続人として財産を受け取ることができます。相続欠格者の直系卑属に財産が渡ってしまうことになりますが、欠格事由は相続欠格者にのみに効力が及び、代襲相続の権利までには及ばない、となっています。
廃除などを検討するような事態がないことが一番ですが、世の中にはいろいろなケースがありますので、こう言った内容も遺言書を書かれる場合などは知っておかれると良いと思います。
相続や税金についてのご相談は小宇佐・針田FP事務所にお任せください。