生前贈与がなくなる?具体的な可能性やどうするべきかFPが解説

生前贈与なくなる? マネー情報

生前贈与についてのご質問です。

先日、ネットで贈与のことについて色々と調べている中で、今後は生前贈与の意味がなくなるかもしれないような記事を見ました。実は近い将来、親から住宅資金の贈与を受ける予定になっていますが、非課税の制度が受けられなくなってしまうのでしょうか?気になっていますので教えて下さい。

伊藤
伊藤

私、伊藤がお答えします!

※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2021年8月2日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。

税制改正大綱に示唆があった

伊藤
伊藤

まだ確定した話ではないのですが、2020年12月10日に自民・公明両党で発表された「税制改正大綱」において、そのような可能性をにおわせる記載があったことによるものです。

どのようなことが記載されていた?

主要なところを抜粋しますと、

「諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、(中略)意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている」

「今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、(中略)格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」

といったような記載があったようです。

要するにどういうこと?

日本でも海外のように、相続税と贈与税を一体化することで、贈与税を実質的に廃止して、財産を子に渡すのが親の生前か死後かで、資産のある人が得をするようなことがあってはならないと読み取れます。

伊藤
伊藤

格差をなくすという大義の下、生前贈与という今までの節税策は使えなくなるということが想定されます。

生前贈与は相続税負担を少なくする目的ですることが多い

確かにそういう意図でするケースは多いですね。

相続とは死亡したときに発生しますが、例えば、父親が死亡し、母親と子2人(長男・次男)が財産を受け継ぐとします。

この場合、父親が被相続人で、母と子2人が相続人になります。

もし父親の遺言書がなければ、民法で決まった遺産の法定相続割合は、母が2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつになります。

伊藤
伊藤

ただ、所得を得た時に所得税がかかるのと同じように、資産を取得したときにも相続税や贈与税などの資産課税があります。

相続税にも非課税の制度はありましたよね?

相続税では税金のかからない基礎控除があり、これは「3000万円+600万円×法定相続人数」となっています。

今回のケースだと、母と子2人の3人ですので、基礎控除は「3000万円+600万円×3人」=4800万円までは税金がかからないことになります。

つまり、もらった遺産の4,800万円を超えた額に対して、相続税がかかることになります。

遺産には現預金はもちろん、株や債券、土地建物などの不動産、貴金属、自動車なども含みます。

ちなみに相続税を支払った課税割合を見ると、2019年においては全国では8.3%でしたが、東京都に限ると16.3%だったようです。

地価が相対的に高い東京都の場合、ざっと6人に1人が該当者であったということですね。

富裕層ほど生前贈与をしたがる傾向にある?

富裕層の方ほど自分がまだ生きているうちに生前贈与を行い、相続される財産をできるだけ少なくしようとします。

伊藤
伊藤

もちろん、贈与にも贈与税がかかりますが、こちらにも非課税措置があるのでうまく活用しようとするわけです。

贈与税の非課税制度はどのようなものがある?

贈与税には、暦年課税と相続時精算課税があり、例えば暦年贈与を選択すると、贈与を受けた人は総額で毎年110万円までは非課税になります。

伊藤
伊藤

贈与者(例えば祖父母や親)からすれば、できる限り多くの受贈者(例えば子や孫)に対し、できる限り長く何年にもわたって贈れば、非課税で多くの財産を移転することができます。

住宅資金の贈与も良い?

住宅取得資金は1000万円(耐震・省エネ住宅なら1500万円)という制度があります。

住宅の購入には一般的には数千万円以上の資金が必要になりますが、贈与する方は非課税で一気に渡せますし、贈与を受ける方はただでもらえるわけですので大変ありがたい制度です。

他に、教育資金は1500万円、結婚・子育て資金は1000万円まで、その目的に使われることを条件として非課税となります。

伊藤
伊藤

ただ、いずれも期限が決まった制度で、現時点では住宅は2021年12月末、教育や結婚・子育ては2023年3月末までの適用のため注意が必要です。

生前贈与するなら早めにということですか?

伊藤
伊藤

まだ決定ではないため断言はできないですが、このような話が出てきているということは、法改正があることは見込んでおいた方が良いと思います。

2021年末の税制改正大綱に沿って、相続税・贈与税の一体化が改正法案に盛り込まれれば、年明けの通常国会で審議され、早くて2022年度中の成立・施行もあり得るとも言われています。

もし生前贈与を考えている人は、可能なタイミングもあると思いますが、最新の情報に注意しながら計画的に実施して頂きたいですね。

生前贈与や相続についてのご相談は小宇佐・針田FP事務所にお任せください。

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