労災保険についてのご質問です。
最近同僚が仕事中に怪我をしてしまい、労災からの給付金を受け取ったと聞きました。
受け取りには特に困った様子はなかったですが、そうでない場合もあると思います。
そもそも労災についてよく知らないので、教えてください。
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2017年2月20日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
労災保険とは?
労災保険とは、労働者災害補償保険法に基づく制度で、業務上の災害または通勤中の災害により、労働者が負傷したり、障害が残ったり、病気にかかったり、死亡した場合について、その本人もしくは遺族に対して所定の保険給付を行う制度です。
保険ですから、誰かがこれに加入をして保険料を負担しないといけませんが、これは従業員ではなく、すべて事業主が負担をすることになっています。
個人経営の農業・水産業・林業などを除いては、原則強制加入のため、労働者を一人でも使用する場合は、事業主は加入手続きをし保険料を支払わないといけません。
この保険料は全額事業主負担です。
ちなみに労働者とは、正社員だけでなく、派遣社員やパート・アルバイトすべて含みます。
人の怪我や病気についての公的な補償というと、健康保険も思い浮かぶと思いますが、健康保険法では、労災保険から給付がある業務災害以外の病気や怪我について補償すると定められているので、労災保険から給付がある業務上の災害については、健康保険の対象外となります。
労災保険ではどんな補償が受けられるの?
療養・休業・障害・遺族・葬祭にすべて給付という文言がついたものや、傷病年金、介護年金、二次健康診断等給付というものがあります。
例えば療養給付というのは、業務上もしくは通勤中の災害による病気や怪我について治療を受ける場合が対象です。
通常、病院に行って支払う診察費用や処置費用、薬の処方費用などが補償されます。
労災指定病院というところがあり、そこに行けば全額無料で受けられますし、そうでない場合はいったん建替えてあとで労災から給付金を受け取ることになります。
労災指定病院については、厚労省のホームページで簡単に検索できます。
ただし、必ずしも完治するまで補償を受けられるというわけでもなく、治癒するまで、つまり症状が固定するまでの補償ということになります。
つまり完治はしていないけれども、治療の必要もないとみなされると、この補償は受けられなくなります。
「休業給付」については、業務上の負傷または病気により休業をしないといけなくなり、それにより賃金が受け取れない場合が対象です。
休業3日間は待ち期間として対象外になりますが、4日目から休業1日につき給付基礎日額の60 %が労災保険から、さらに休業特別支給金から20%、つまり合計80%が支給されます。
これは事故直前の3か月間の平均賃金をもとに計算されます。
「障害給付」については、業務上の病気や怪我によって治癒はしたものの障害が残った場合のもので、障害の度合いが1級~14級のどれなのかにより、補償内容が変わってきます。
他にも「遺族給付」というのは従業員が死亡した場合に遺族へ支払われるもの、「葬祭給付」とはその死亡時に葬儀を行う人に対しての給付など、様々な補償があります。
労災の対象になるのは?
業務として認められる作業中のものは、基本的にすべて業務災害として、労災補償の対象となります。
どちらかというと少しややこしいのが通勤災害のほうで、これは通勤途中のものが対象になるわけですので、通勤の定義について考えないといけません。
通勤とは、労働者が就業に際して、住居と就業の場所との間を、合理的な経路および方法により往復することを指します。
よって往復の経路を逸脱もしくは中断した場合においては、通勤とみなされないことがあります。
例えば、仕事終わりに夕食の材料を購入するために、会社から自宅への往路と関係のない場所にあるスーパーへ買い物に行き、その途中で起こった事故については、通勤経路からの逸脱とみなされるため、通勤災害には該当しないことになります。
ただし、このお買い物をするという行為自体が悪いわけではありません。
日常生活上必要な行為であり、厚労省で定めるやむをえない理由で行われたものであれば、通勤とみなしてもらえます。
日用品の購入や、職業能力開発のための訓練や受講、選挙権の行使、病院等で診察治療を受ける場合などは、認められることがあります。
先ほどのケースで問題だったのは、会社からの帰宅コースを大幅に逸脱したことですね。
もちろん、家についた後の事故は通勤災害とは認められません。
よって自宅敷地内に到達してから転んでけがをした場合などは、難しいでしょうね。
手続きはどうするの?
労災保険は、加入しているのは会社で、保険料を負担しているのも会社なので、会社がすべてやってくれると思うかもしれませんが、実は自分で手続きをするのが基本です。
もちろん親切な会社なら本人の代わりにやってくれるところもあると思いますが、義務付けられているわけではないので。
先ほども言いましたが、業務災害や通勤災害に健康保険は原則使えませんので、労災保険の申請が必要です。
労災の請求書には、事業主証明といって、事業主が署名をする欄があり、これにより業務通勤上の災害であると事業主側が認めることになります。
ただ、万が一事業主がそれを認めてくれない場合には、本人もしくは遺族が労働基準監督署にその旨の相談をします。
そうすると事業主に対して、どうして認めないかを署名するための書類の提出が、労基署から求められることになります。
あとはどの労災補償を受けるかによって、申請書類も変わってきますし、賃金の計算などは会社の協力も必要でしょうから、やはりまずは勤務先と相談ですね。
このように労災保険は労働者と家族を守るためのものではありますが、雇用主側としても自社を守るものにもなりますので、しっかりと備えておきたいですね。
お金のお悩みなどのご相談は小宇佐・針田FP事務所にお任せください。