交通事故で賠償金の請求はできる?請求できるケースや金額をFPが解説

交通事故で賠償金の請求はできる?請求できるケースや金額をFPが解説 マネー情報

車の事故を起こしてしまった方からのご質問です。

先日、車を運転中に車同士の交通事故に遭ってしまいました。
幸い事故自体は軽いもので、多少の治療費と車の修理代がかかる程度で、全て自動車保険でカバーできました。
ただ車同士の事故ですし、一歩間違えれば大怪我や最悪亡くなるかもしれないと思うと今になって恐くなりました。
もしそうなって相手が悪い場合には、賠償金のようなものは貰えるのでしょうか?
私は専業主婦で夫は会社員ですが、やはり人によって金額の差はあるのでしょうか?
愛知県は交通事故件数が全国で常に上位ですし、知っておきたいです。

針田
針田

私、針田がお答えします!

※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2020年5月18日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。

大きな交通事故の際には、賠償金は請求できる?

針田
針田

相手に過失がある場合は、その過失割合分は相手に請求できます。

軽い事故の場合には、治療費・車の修理代・修理中の代車費用程度ですが、死亡事故や後遺障害が残るような場合は、さらに「逸失利益(いっしつりえき)」を請求することが出来ます。

喪失利益や得べかりし利益という言葉を使うこともありますが、「債務不履行または不法行為に基づく損害賠償において、その損害賠償の対象となる事実が無ければ得ることができたと考えられる利益」のことを言います。

その事故さえなければ得られていたであろう経済的な利益のことを指しますので、これは被害者側の年齢や収入に応じて異なります。

お医者さんを事故に遭わせてしまうと大変なことになる、なんて聞いたことがあると思いますが、一般の方よりも逸失利益が大きくなりますから当然そうなります。

逸失利益とは

交通事故の場合、逸失利益は2種類あるのですが、「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」です。

前者は、事故により負傷し、治療を尽くしても一定の後遺障害が残ったことで、労働能力の全部または一部が失われたことによる損害のことを指します。

後者は、事故によって被害者が死亡し、将来得られていたであろう収入を得られなくなったことに伴う損害のことを指します。

いずれも所定の計算方法に基づいて算出します。

逸失利益の計算方法

  • 後遺障害逸失利益は、「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」
  • 死亡逸失利益は、「基礎収入×(1―生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」
針田
針田

聞きなれない言葉がたくさん出てきたと思いますが、両方に共通する「基礎収入」は、事故にあう直前の収入を指します。

会社員なら前年の額面年収、自営業なら前年の申告所得と固定費です。

でも20代の会社員は今時点では低賃金でこれから上がることが期待できるでしょうし、専業主婦や学生は収入自体ありませんから、このような場合には、賃金センサスを使います。

賃金センサスとは、厚労省が1948年以降毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の通称です。

専業主婦(主夫)の場合、家事労働者として通常の労働者と同じ扱いになり、賃金センサスの女性平均年収を基準にしますが、2017年平均だと377万円です。

学生や幼児などの未就労者についても同様に賃金センサスを参考にしますが、まだ仕事に就いてもいない男の子と女の子に、差が出てはいけませんよね。

女の子に対して女性平均年収を使うと、当然男性平均年収より低くなるわけですが、平成14年の東京地裁で、全労働者の平均賃金を採用することという判決が出ました。

ちなみに2017年の全労働者の平均年収は491万円です。

実際には、事故日の属する年度の数字を使うので、詳細は専門の弁護士等に相談されることをおすすめします。

「ライプニッツ係数」とは?

針田
針田

ライプニッツとはドイツの数学者の名前で、複利の金利を計算する際に用いる係数のことです。

損害賠償金というのは一括払い(一時払い)が原則ですので、逸失利益のように、将来得られるであろう予想利益を、いまの価値に換算して一括で請求しないといけません。

その時に使うのがこのライプニッツ係数で、喪失期間(失われた期間)が多くなればなるほど、係数も大きくなります。

つまり50代の方よりも、30代の方の方がライプニッツ係数は大きくなる(逸失利益が多くなる)ます。

ちなみに今年の4月1日から、民法改正によって法定金利が5%から3%の3年固定の変動型に変わったことに伴い、ライプニッツ係数の数字が以前よりも大きくなりました。

つまり今年の4月1日以降に発生した交通事故は、以前よりも逸失利益の金額が多くなるように改定されました。
今後は3年毎の見直しが図られます。

具体的な金額はどのくらい

針田
針田

例えば40歳男性年収700万円、子供一人と妻あわせて2人を扶養している方が、今年の4月以降に交通事故に遭ったとします。

これで後遺障害11級の認定を受けたとすると、700万円×20%(後遺障害11級による労働能力喪失率)×18.327(ライプニッツ係数※改正前は14.673)=2,565万円が逸失利益となります。

ちなみに4月前のライプニッツ係数だと14.673になるので、逸失利益は2054万円と改正後の現在の方が500万円ほど多い計算になります。

死亡事故の場合は、700万円×(1-30% ※生活費控除率)×18.327(ライプニッツ係数)=8,980万円となります。

改正前だと7189万円と1800万円も差があります。

仮この方が30代だと、1億円を超えますね。

逸失利益の注意点は

被害者側になった時には、専門の弁護士等にご相談してください。

他の勘案事項も加味して、より有利に相手と交渉してくれることもあると思います。

いっぽうで加害者側になってしまった場合、基本的にはご自身が加入している保険を使います。
自動車保険なら対人賠償は無制限補償となっていると思いますが、自動車事故ではない事案の場合、対人賠償が1億円とかもっとすくないケースもあります。

先程申した通り、今年の4月1日以降は、逸失利益の金額が以前よりも多くなっています。

針田
針田

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