公的年金についてのご質問です。
私はいま40代で会社勤めをしております。
昨年昇給をしたので毎月の給料も上がりましたが、それに伴い厚生年金や健康保険など税金の負担も増えて、手取りは思ったより変わらないなぁと感じております。
それでも自分がもらえる老後の年金額は増えるだろうし、仕方ないかと思っておりましたが、あるとき何かの記事で「給料が上がっても老後の年金額はそれほどは変わらない」と目にしました。
その時はあまりよくわからなかったのでサラッと流しましたが、年金って自分が支払った金額に応じて将来貰えるものだと思っておりましたが、どういうことでしょうか?
教えてください。
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2021年11月22日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
公的年金が安くなるとはどういうこと?
会社員や公務員が加入する厚生年金は、毎月負担する保険料はその人の収入に比例しますが、老後支給される年金額はそれが完全に反映されるわけではないんですね。
皆様ご存じの通り、日本国内に居住する方は20歳を超えると何らかの年金制度に加入することになります。
自営業や学生は第1号、会社員や公務員は第2号、第2号に扶養される主婦は第3号とすべての方が公的年金保険の加入者(被保険者)になります。
第1号被保険者の方が受給できる年金額は、定額制です。
その方の収入には関係なく、毎月の保険料は16,610円(令和3年度)で、仮に20歳~60歳まで満額加入して入れば、年金額は年間780,900円になります。
いっぽう第2号の会社員が加入する厚生年金ですが、この方々が受給する年金額は定額制ではありませんね。
厳密にいうと「報酬比例部分と定額部分」に分かれます。
「厚生年金は2階建て」
報酬比例部分というのは、給料の額に比例して将来の年金給付額が変わる部分です。
給料が多い人は、この報酬比例部分の年金額が多くなります。
いっぽうで、定額部分というのは基礎年金の部分で、これは給料に関係がなく定額の給付になります。
先ほどの第1号被保険者と同じ考え方です。
つまり厚生年金については、収入に比例する部分と比例しない部分の合計が支給されますので、「支給額すべてが完全に収入に比例するとはいえない」というわけです。
具体的な金額は?
厚生年金の支給額は、加入期間とその間の収入の平均値により計算されるため、自分で計算するのは非常に難いのですが、ご参考までにおおよその金額でお伝えします。
大卒の22歳から働き始めて60歳までの38年間会社員だったAさん、38年間の年収の平均額が550万円(標準報酬月額353,000円)だとします。
この方が支払う厚生年金保険料は、月額32,300円(標準報酬月額の18.3%を労使折半ですが、実際には毎年の4~6月の平均給与から標準報酬月額を算出して計算します)
そして65歳から支給される年金額は、一月あたり161,000円(年間193万円)です。
次に、同じ条件で勤務をしたものの、年収の平均額が240万円(標準報酬月額154,000円)のBさん、Aさんと比べると年収は4割程です。
負担する厚生年金保険料は収入に比例しますので、Aさんと比べると4割程の負担となり、月額13,730円です。
ではこの方に支給される年金額はというと、もし年金の支給額が支払った保険料に完全に比例するなら、Bさんの年金額はAさんの4割程になりますので、1月あたり64,000円(年間77万円)の支給となりますが、実際にはそうはなりません。
Bさんには、1月あたり107,000円(年間128万円)支給されます。
それぞれの年金には定額部分が含まれているので、そこには金額の差は生まれず、報酬比例部分のみに差が生まれるので、このような計算となります。
所得が多くない人にありがたい公的年金
公的年金はあくまでも保険制度です。
保険というのは相互扶助という考えをもとに出来ており、お互いに少しずつお金を出し合い、リスクに備えるわけですね。
公的年金制度で備えるリスクというのは、長生き・死亡・障害の3つです。
長生きへの保険として先ほどご説明した老齢年金を受け取ることができます。
死亡への保険としては残された遺族に対して遺族年金が、障害への保険として、障害年金が支給されます。
よって所得に応じて支給されるというよりかは、どのような方であっても最低限の収入を確保できるような仕組みになっていますね。
所得分配の機能を持つとも言われています。
とはいえ、この収入だけでは老後の生活に不安を覚える方が多いのも事実ですし、コロナですっかり忘れられていますが老後2000万円問題というのも一昨年話題になりましたが、完全に棚上げ状態ですね。
老後の生活に必要なお金は、単身者で月15万円、夫婦で月25万円と言われていますので、公的年金だけでは不足するのであれば、その備えについて今一度考えることも必要かと思います。
公的年金やお金についてのご相談は小宇佐・針田FP事務所にお任せください。