金の贈与を検討している方からのご質問です。
これから金を買おうと思っており、これを少しずつ子供に贈与していきたいのですが、非課税枠で贈与という証明は出来るのでしょうか?
登記のある不動産とか、通帳の現金は証拠が残るので良いのですが。
このようなものはどうすれば良いのでしょうか?
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2020年10月26日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
金は税務署調査の対象になる可能性がある
贈与税は相続税の補完税と言われており、相続税の脱法を防ぐ目的でできた税金で、相続税法の中で規定されています。
これは現金でも不動産でも金でも同じで、相続税の脱法とならないように税務署の厳しいチェックがあります。
また金に関しては、200万円を超える取引があると、税務署に「支払調書」が提出されますので税務調査の対象となることは十分あり得ます。
ただご質問にもある通り、金は不動産のように登記するものでもなく、通帳に記帳するものでもありません。
そこでまずは、「名義預金」にならないことにご注意ください。
名義預金とは?
これは現金の時によく使う言葉なのですが、「名義だけ他人から借りている預金」のことを言います。
贈与とは、財物をあげる側の贈与者と、もらう側の受贈者とで、「あげるよ」「もらうよ」の意思疎通が成立していることが前提となります。
前回の放送で、年間110万円以下であれば、贈与税は非課税というお話があったと思いますが、例えば、親が子供に毎年110万円ずつ子供の口座に振り込むとします。
この口座を、子供が普段から出金して使っているような形跡があれば良いのですが、通帳も印鑑もキャッシュカードも親が管理している、なんていうことは、実はよくある話なんですね。
名義は子供のものであっても、実態は親の財産であり、ただ子供の口座を借りているだけ、というようにとらえられる可能性があります。
その判断は税務署によりますので、全てのケースがそうとは言いませんが、これを名義預金と言います。
そうするとどうなるか、親が亡くなった時に、その口座にあるお金はあくまでも親の物であるとみなされて、相続税の対象になります。
名義預金だとみなされると贈与した意味はなくなる
名義預金だとみなされると、贈与はそもそも無かったことにされますので、コツコツ毎年口座にお金を移していたのが無駄になります。
少なくとも税務調査の時には、通帳・銀行印・キャッシュカードの場所くらいは子供が答えられないと、子供の資産としては認められない可能性があります。
子供に言うと使っちゃうから、子供には内緒にしておいて親が子供の口座にお金を貯めておく、なんて聞くと思い当たる方は多いんじゃないでしょうか。
親だって自分の老後が心配だから、とりあえず自分が管理できるように、子供に通帳等は渡さない、なんていうこともあると思います。
これは現金に限らず、金にも同じことが言えますよね。
なので、「贈与の証拠」を残すように注意して頂くとよいと思います。
贈与の証拠はどうやって作る?
贈与契約書を作るのが一般的な方法です。
インターネットで贈与契約書で検索すれば、ひな型が出てくると思いますが、
「いつ・誰が誰に・何を・幾ら」贈与したかを記載して、贈与者と受贈者がお互い住所氏名を記入をするのですが、公正証書で作るとより完璧です。
これを毎年やるとなると少し面倒ですが、だからといって例えば今後10年分の贈与をまとめて契約書で交わす、ということは避けてください。
連年贈与といって、一回で1100万円贈与したとみなされる場合があります。あとは、あえて非課税の110万円を超えた贈与をして、超えた分を納税するという方法もあります。
例えば111万円贈与をすると、1万円が課税対象となるのですが、この場合の税率は10%つまり税金は1,000円ですが、これをあえて申告して納税をします。
贈与税の申告は、受贈者が行いますので、つまり「あげると」「もらよ」の意思疎通ができているとみなされ、これにより名義預金と扱われることは無くなるはずです。
金ならではの注意点は?
現金と違って、金の価値(評価額)は常に変動します。
では金を贈与した時の価格はいつ時点の価格を基準とするかですが、これは贈与が成立したその日です。
ちなみに相続の場合は死亡日(相続発生時)、この日の小売価格が金の評価額となります。
そうするとより一層、先ほどの贈与契約書の必要性が出てきますよね。
現物である金を何月何日に贈与したのか、はっきりさせておく必要があるわけです。
あと、その子供が将来金を売る時のことも考えてあげてほしいです。
売る時のことまで考えるとは、どうすること?
金を売った時、購入した時よりも高く売れた場合は、利益が出ているということになりますので、当然そこには税金が発生します。
譲渡所得税という税金で、50万円を超える利益が出た場合には、その超えた分が課税対象となります。
あと金を購入してから売却するまで、保有期間が5年を超えていると、利益額の半分のみが課税対象になるという優遇措置があります。
ちなみにこの保有期間ですが、親から子へ金を贈与して、子がその後売却をした場合は、子が受像した日を基準とするのではなく、親がその金を取得した日を基準として、そこから5年超えているのかどうかで判断します。
つまり親が当時いつその金を購入したかの記録がとても大切になってきます。
さらに注意しないといけないのが、親が当時購入した価格が不明の場合は、売却金額の5%が購入価格とみなされてしまいます。
仮に子供が200万円で金を売却した時に、親が当時金を取得した時の価格が100万円だった場合には、200-100-50(非課税枠)=50万円譲渡所得となり、5年以上保有しているとその半分の25万円が課税対象となってその年の他の所得と合算して納税(総合課税)をするのですが、親が当時金を取得した時の価格が不明の場合には200-10(200の5%)-50=140万円の半分、つまり70万円が課税対象額となってしまう可能性があります。
税額が約3倍近く増えてしまうわけですから、これは何としても避けたいですね。
そこで、親が金を贈与する際には、贈与契約書を交わすのが望ましいのはもちろんですが、親がその金を取得した時期と当時の価格の記録も残してあげておくことをおすすめします。
もしご不安な点がある場合には、小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。