個人事業主の節税についてご質問です。
近々独立開業を考えている会社員です。
社会保険も税金も大きく違ってくるでしょうから勉強しないといけないのですが、なかなかそこまで手が回りません。
個人事業主の知人からは、「税金対策」という言葉をよく耳にします。
事業が軌道に乗ってきたら、自分もそういうことが必要になるんだろうなとは思うのですが、節税って一般的にはどんなことをするんですか?
教えてください。
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2019年7月29日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
個人事業主とは?
個人事業主というのは、法人格(株式会社等)ではなくあくまでも個人として事業を行い、「事業所得」を得ている人のことを指します。
例えば手元にあるものをメルカリに出してちょこっと利益がたからと言って、これは事業所得になりません。
継続的に入ってくる・時間や労力がけて得ている・業として成り立つ、という曖昧ではありますが、事業所得の基準はあります。
この所得について毎年確定申告をし納税をするわけですが、あくまでも自己申告ですから、正確な申告をするのは当然ですが、適正な節税対策により、その納税額を抑えることも可能なわけです。
個人事業主の納める税金は何がある
まず所得税と住民税、これは会社員の方と同じ、ここに加わるのが、事業税と消費税です。
いっぽうで個人事業主の方が節税をするというのは、主に所得税を対象とします。
というのも、所得税の節税が自動的に住民税や事業税の節税にも繋がるからです。
青色申告と経費の計上から
基本のとして、まず「青色申告をする」「経費を漏れなく計上する」につきます。
白色申告というのもあり、以前は記帳義務のない白色申告を選ぶ方も多かったのですが、平成26年以降は白色申告でも記帳義務はありますので、白色申告のメリットはほぼないといえるでしょう。
青色申告は面倒だというイメージを持っている方は多いと思いますが、以下のメリットがあります。
- 65万円の特別控除が受けられる
- 家族に給与を払って経費計上ができる
- 赤字の繰り越しができる
- 売掛金の貸倒に備えて引当金という経費計上ができる
- 30万円未満の備品は一括経費計上が出来る
なかでも65万円の特別控除というのは、その年の利益から単純に65万円を引けますから、利益が多い方ほど税率も上がりますから、よりお得です。
例えば所得500万円の年は、所得税と住民税で約20万円、1000万円なら約30万円弱も納税額が抑えられます。
国民健康保険料も下がりますから、個人事業主ならこれは必ず利用するべきです。
青色申告のメリット
家族に払う給与も経費計上できます。専従者給与といって、あくまでもこの事業に専従している家族でないと経費計上は認められませんが、所得が分散されることにより税率が下がることもありますからお得です。
赤字の繰り越しについては期間3年間という制限はありますが、赤字を翌年に繰り越せるので、利益の上下が大きい業種の方には魅力です。
そして経費計上を適正に漏れなく行えば、それだけでも節税になります。
家賃・光熱費・通信費・車の購入費・ガソリン代など、事業に利用している部分については経費計上できます。
あくまでも事業として利用する割合分のみが対象ですから、自宅の家賃が全額経費ということにはなりません。
「小規模企業共済」「経営セーフティ共済」「国民年金基金」も利用できる
以上に加えて、「小規模企業共済」「経営セーフティ共済」「国民年金基金」「確定拠出年金」などを利用することで、さらに節税が出来ます。
確定拠出年金は会社員でも加入できますが、他の3つは自営業者だけの制度です。
「小規模企業共済」
「小規模企業共済」は自分の退職金を積み立てる制度です。個人事業主の退職金は自分で用意しないといけません。
毎月1,000~7万円で500円単位で任意に決めた金額を共済に支払い、支払ったお金は全額所得控除となります。
積み立てられたお金は、事業の廃業時に、一括・分割・その併用のいずれかで受け取ることが出来ます。
受取る際は当然所得になるわけですが、一括なら「退職所得控除」、分割なら公的年金と同じ「雑所得」となり、他の所得よりも有利な控除を利用することが出来るので、受取り時にも税金が抑えられます。
また、前納制度があるので、例えば年末にもう少し経費を計上したいようなときには、月7万円の上限を年払いで前納すれば、その全額がこの年の控除対象となるのも良い点です。
さらに貸付を利用できるので、緊急時に年0.9~1.5%という低い金利で、積み立てたお金の中から借りることもできます。
このようにメリットが多い制度なので、個人事業主の方は利用することをお奨めします。
デメリットは、加入してから20年以内に、廃業ではなく任意解約をすると、払戻金はそれまでの掛け金を下回ります。
ちなみに1年以内だと払戻金はゼロです。
「経営セーフティ共済」
取引先の倒産によるこちらの事業を守る為の共済です。
月々5,000~20万円の範囲内で最大800万円まで、毎月支払っていくのですが、その積み立てられたお金の10倍(最大8000万円)まで、借り入れが出来るという仕組みです。
取引先が法的整理に陥った時、天災による不渡りなど、借り入れが利用出来るための要件はあります。
借入金は無利子で、返済期間は借入金額ごとに3パターン(5・6・7年のいずれか)が設定されており、借り入れしてから6か月後から返済開始です。
返済期間を超えてしまうと、残った分について年14.6%というかなり高いペナルティが発生してしまいます。
この制度の魅力は、毎月の掛け金は全額経費計上ができ、さらに40か月以上支払えば、あとはいつ解約しても100%お金が戻ってきます。
受取った年はそれが全額所得扱いになるので注意が必要ですが、受け取る年が赤字なら相殺できますよね。
「国民年金基金」
40年間国民年金だけの自営業者と厚生年金の会社員とでは、老後の年金収入が2倍以上違います。
その穴を埋めるために、平成3年にできた公的制度です。全国国民年金基金と職能型国民年金基金の2種類がありますが、いずれも掛け金全額が所得控除になります。
これにも掛け金の下限値と上限値があり、下限値は年齢性別で異なるのですが、上限は68,000円です。
小規模企業共済と併用して加入することが出来るので、小規模企業共済の月7万円と国民年金基金の月68,000円の上限に加入すると、年間165万円もの所得控除が出来ますので、こちらも有効な節税対策になるでしょう。
デメリットは、原則65歳まで掛け金を受け取ることができないので、小規模企業共済のように廃業したから受け取れるというものではないです。
節税だけすれば良いわけではない
節税をしても、キャッシュフローが悪ければ、肝心の事業自体に悪影響が出ます。
銀行の融資にも影響が出るでしょう。先ほど挙げた3つの制度は、お金は貯まりますがかなり先にならないと使えないお金です。
また経費計上についても、適正に行わずに後々修正申告などをすると逆に高くつきます。
いっぽうで利益が多くなることが継続的に続くなら、いっそ法人成りしたほうがメリットになることも多いです。
その場合はご自身だけで判断せず、そのあたりは専門家の税理士と相談するべきでしょうね。
節税についてより詳しく知りたい方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。