法人の保険と節税についてのご質問です。
先週の新聞記事で見たのですが、生命保険会社が法人の節税をうたって保険販売をし、それを金融庁が問題視しているという記事を見ました。
私も自営業なので同様の保険に加入をしておりますが、何が問題視されているのかが知りたいです。
教えてください。
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2018年7月2日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
保険による節税とは
会社を経営するにあたり、その事業に必要な支出は経費として認められますよね。
例えば従業員を雇っていればその給与、事務所を構えているならテナント代、事業のために使う自動車を所有しているなら購入費や車検費用などです。
いっぽう保険は、経費として認められるものと認められないものがあります。
まず損害保険は、経費として認められるものが多いです。
例えば会社の設備や什器備品などにかける火災保険料、会社で使う車にかける自動車保険、他にも各種賠償保険や傷害保険などがあります。
それぞれの保険商品により、保障の内容は様々ですが、いずれも会社が負う損失を補填するものですので、多くの場合これは保険料の全額が経費扱いになります。
生命保険は経費になる?
生命保険については、そもそも会社で生命保険に加入するということ自体、一般的にはイメージが湧きづらいかもしれません。
そもそも法人は死亡しませんからね。
ただ生命保険についても、商品によっては、保険料の全額が、もしくは半額が経費となるものがあります。
これはいずれも金融庁の認可により決まります。
この経費(損金といいます)が認められる一部の生命保険商品の仕組みを利用した保険の販売が最近加熱しているようです。
保険料の損金を利用する販売とは
そもそも法人で生命保険に加入するといっても、あくまでも保険料を支払うのが法人なのであって、その保険の対象者は個人です。
一般的には会社の社長や役員を保険の対象(被保険者といいます)として、契約をするということになります。
それにより得られるメリットを紹介します。
1つめは、被保険者(つまり社長や役員)が死亡した時に、会社に保険金が入ってくるという点です。
社長や役員が死亡すると、中小企業などは特に経営に大きなダメージを受けますので、それを金銭面で軽減することができるわけですね。
これが生命保険の醍醐味というか、そもそもの主旨なんですね。
ですからこれをうたった保険の販売は、何の問題もありません。
問題となっているのは何?
先ほど申しあげた、支払う保険料の一部もしくは全額が、毎年損金として認められるという点、且つこの保険を将来解約することを前提とした保険の販売手法、これが一部の保険会社内で過熱をしているようで問題視されています。
仕組みを簡単にご説明すると、法人税のいまの実効税率は約34%あるのですが、たとえば毎年1000万円の利益を出す会社があるなら、毎年340万円税金を納めて660万円が手元に残ることになるので、10年後には6600万円が手元に残りますよね。
いっぽうで、極端な話ですが、毎年1000万円の保険料を払い、これが全額損金になるなら、この会社の法人税は0円になりますよね。
そして10年後にこの保険を解約すると、掛け金の80%の払戻金があるとするなら、10年後には8000万円が手元に残りますよね。
つまり現金で貯めるよりも、20%以上のお金が手元に残るわけですね。
ただしこの8000万円を受け取った年は、8000万円の利益が出たことになるのでこれは当然法人税の対象になるのですが、この年に役員が退職をし退職金としてこの8000万円を支払えば、それは会社の経費として認められるので、やはりこの年も法人税はかかりません。
いっぽうでこの退職金を受け取る役員も、退職所得控除という退職金の課税が軽減される措置を受けられるので、8000万円全額とはいきませんが、その多くが手元に残ります。
極端なお話をしましたし、すべての会社にこのロジックが使えるわけでもないのですが、先ほどの一つ目のメリットも加わると、経営者にとっては魅力的に感じる方も多いと思います。
販売手法に問題がある
保険会社は、自社の商品を世に出す際には、金融庁から認可が下りたら販売が出来ます。
この認可をもらう際に、先ほど挙げた節税の商品性を前面に出していたら、認可は絶対におりません。
保険の本来の目的の「保障性」にたいして認可を下ろしているわけですから、そこから逸脱した節税を前面に出した販売行為というのは、本来厳禁です。
でも一部の保険会社内でそれが過熱して見られるので、今回新聞に出たようですね。今後に注目です。
法人の節税について、詳しく知りたい方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。