遺族年金についてのご質問です。
昨年は、コロナ禍による自殺者の増加が起こり、特に女性に目立つというニュースを見ました。
これまでよりも、死というものがより身近に感じられるようになり、もちろん考えたくはないことですが、我が家の場合はどうなってしまうだろうと時々頭をよぎります。
まだ子供は小学生で、妻である私自身は仕事はしているものの、いわゆる扶養の範囲内でパート勤務です。
住宅ローンもあります。
夫婦のどちらかがコロナにより働けなくなったときや、勤務先からリストラされたときなど、以前よりも真剣に考えるようになりました。
一番心配なのは、最悪亡くなってしまったときのことです。
生命保険には加入していますが、公的な保障のようなものがあるのか、教えてください。
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2021年1月24日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
2020年の自殺者は増加傾向
コロナ感染に対しては、人それぞれ置かれている状況によって捉え方が異なると思いますが、こと経済面においては昨年も今年もかなり厳しい状況だというのは皆さん共通認識ではないでしょうか。
経済と自殺者数には相関関係がかなり有るといわれておりますが、昨年は本当に深刻な状態でした。
昨年10月の自殺者2153人は前年同月比で40%増、男女比でいうと女性に顕著でなんと80%増だそうです。
これは経済的な理由が原因で、総務省の労働力調査によると、女性の非正規雇用者は、2020年の9月時点では前年度比で73万人も減っています。
こうなると、非正規労働者のなかでも特に中高齢者の方にとっては、次の就職先の選定は普段よりも更に難しくなるでしょうから、今年も本当に心配です。
今回のご相談者のように、これまでよりもいろいろなリスクについて関心が生まれるのは当然かと思います。
そしてご質問にあった、家族が亡くなってしまった時には、遺族年金という公的保障を受けられる場合があります。
遺族年金の受給対象になるのはどんな場合?
国民年金または厚生年金保険の被保険者または過去に被保険者であった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金のことを遺族年金といいます。
遺族年金には、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があり、亡くなられた方の年金の納付状況によって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。
遺族年金を受け取るには、亡くなられた方の年金の納付状況・遺族年金を受け取る方の年齢・優先順位などの条件が設けられています。
遺族基礎年金と遺族厚生年金は、受給要件がそれぞれ異なります。
遺族基礎年金についての要件と受給金額は?
亡くなったご本人と、受け取り側それぞれに条件があります。
亡くなったご本人の条件
まず亡くなった方ご本人が満たさないといけない要件として、国民年金保険料を生前にしっかりと納付していないといけません。
国民年金保険料はご存じの通り、20歳以上60歳未満が納付期間ですが、生前にこの期間中の3分の2以上保険料を納付している必要があります。
つまり国民年金保険料をしっかりと納めていないと、万が一お亡くなりになったときに、遺族基礎年金の対象にはならないことがあるんですね。
亡くなった後に慌てて納付しても認められませんので、まずはご家族が国民年金保険料をしっかり納めてきたかどうか、確認されたほうが良いと思います。
受け取る側の条件
次に、遺族基礎年金を受け取る側の条件ですが、お亡くなりなった方によって生計を維持されていた、子供のいる配偶者もしくは子供自身です。
ここでいう子供というのは、18歳未満の子供、もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子供を指します。
遺族基礎年金は、子供の養育のための公的保障という位置づけですので、子供のいない配偶者や、18歳もしくは20歳以上の子供には受給資格が無いです。
金額はどのくらい支給される?
遺族基礎年金は定額制で、基本的には年額781,700円+子供一人につき224,900円の加算があり、第三子以降は一人あたり75,000円の加算となります。
仮に2人の18歳未満の子供がいる場合には、781,700円+224,900円+224,900円となり、合計約1,231,500円が年間の支給額となります。
その後第一子が18歳以上になったら、このこの分加算224,900円のがカットされ合計約100万円となり、第二子が18歳以上になるとここで支給は終了となります。
ちなみにこの遺族基礎年金は、妻が亡くなった場合でも、夫は受給できますのでご安心ください。
以前は夫は受け取れなかったのですが法改正により受け取れるようになりました。
ただし所得制限がありますので、年収にして850万円を超える方には支給されません。
遺族厚生年金についての要件と受給金額は?
これは亡くなった方ご本人が生前に厚生年金保険料を納めていた(会社員や公務員)場合に、その方によって生計を維持されていたご遺族が受け取ることができます。
亡くなったご本人の条件
先ほどの遺族基礎年金は18歳未満の子供がいることが条件でしたが、遺族厚生年金においては子供の有無にかかわらずご遺族へ支払われます。
ただしこちらは少し複雑で、受給できる期間が人により異なります。
受け取る側の条件
まず子供がいない夫婦の場合、夫が死亡した時点で妻の年齢が30歳を超えていない場合には、妻に遺族厚生年金が支給されるのは5年間だけです。
いっぽう夫が死亡した時点で妻が30歳を超えていれば、遺族厚生年金は基本的に妻が死亡するまで一生涯支払われます。
次に子供がいる夫婦の場合、妻の年齢に関わらず遺族厚生年金は支給されます(ただし再婚をすると打ち切りになります)。
先ほどの遺族基礎年金との両方が受け取れるわけですね。
ただ遺族厚生年金は一生涯受け取れると言っても、妻自身が老後の老齢厚生年金を受給するようになった場合には、妻自身の老齢厚生年金との差額分のみが遺族厚生年金として支給されます。
例えば妻が生前に会社員であって、夫に先立たれてしまい、遺族厚生年金を年額50万円受給しているとします。
その後この妻自身が65歳になり自分の老齢厚生年金が30万円支給されるようになった場合には、もともと受給していた遺族厚生年金の50万円と自分の老齢厚生年金の30万円の合計80万円を受給できるわけではなく、自分の老齢厚生年金の30万円+遺族厚生年金は50-30=20万円となり、結局合計50万円(今まで通り)になるようになっています。
遺族厚生年金の金額は?
酬比例部分の年金額の4分の3が支給されます。
基本的には夫が本来受け取るはずだった厚生年金部分の4分の3が支給されますので、遺族厚生年金は人によって支給額が異なります。
ただ遺族基礎年金のように、年額100万円を超える程にはならないと思います。
例えば40歳の男性が亡くなった場合には、平均的にはおおよそ50~60万円前後といったところです。
中高齢寡婦加算年金とは
遺族厚生年金は、子供のいない妻(遺族厚生年金のみ)や、子供が18歳を超えて遺族基礎年金が停止となった妻(こちらも遺族厚生年金のみ)にとっては、金額的に不安ですよね。
そこでこの補填として、中高齢寡婦加算年金というものが、遺族厚生年金の追加として支給されます。
ただしあくまでも遺族厚生年金の追加ですので、そもそも遺族厚生年金の対象になっていない夫の妻には支給されません(自営業の妻など)。
あと寡婦(夫に先立たれた妻)が対象ですので、寡夫(妻に先立たれた夫)には支給されません。
金額はどのくらい支給されますか?
こちらは年額586,300円と定額制になっており、子供の有無に関わらず、妻に支給されます。
受け取れる期間は妻が65歳になるまでで、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 夫が亡くなったとき、妻が40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。
遺族年金は条件が複雑なので、FPに相談を!
このように、遺族基礎年金・遺族厚生年金・中高齢寡婦加算年金それぞれの受給要件が異なりますので、とても複雑です。
実際にはもう少し細かい要件がありますので、 ご自身の場合はどうなのか気になる方は、年金事務所にご相談に行く、もしくは専門の方に相談をするのが良いと思います。
遺族年金について、詳しく知りたい方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。