相続放棄と遺産分割協議はどう違う?違いや注意点をFPが解説

相続放棄と遺産分割協議 マネー情報

50代女性の方からのご質問です。

先月父が亡くなりましたので残された家族で相続手続きを進めています。相続人は、母と私を含めた子供3人(兄、私、妹)です。
遺言書は無いので遺産分割協議書を作成するつもりなのですが、私と兄は父の生前に住宅購入費用などの援助を受けていましたので相続放棄しようと考えています。
この場合、相続放棄の手続をするのと、遺産分割協議で自分のもらう分をゼロとするのは何か違いがあるのでしょうか?
デメリットの少ない方で進めようと思いますので、教えていただけると助かります。

小宇佐
小宇佐

私、小宇佐がお答えします!

※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2021年8月23日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。

相続放棄と自分の相続分をゼロにするのはどう違う?

小宇佐
小宇佐

これは、手続きも権利関係も大きく違ってきます。

手続きの違い

まず手続き面で言うと、相続放棄をする場合は、相続放棄をする各人が必要な書類を揃えて被相続人(亡くなった方)の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。

期限が相続が始まったことを知ってから3ヶ月以内とかなり短いので注意が必要です。

一方、遺産分割協議書を作成する場合ですが、そもそも遺産分割協議書は何のために作成するかと言うと、相続の内容を明確にする目的は当然ありますが、実際は対外的に財産に対する権利を証明するため、と言う意味合いの方が大きいと思います。

相続税の申告の際には税務署に提出する必要がありますし、財産を動かす場合にも各機関に提示しなければいけません。

例えば、預金を動かす場合には銀行などの金融機関に対して、相続登記を申請する場合には法務局に対して、車の名義を帰る場合は運輸支局に対して、遺産分割協議を提出します(コピーで良い場合が多い)。

小宇佐
小宇佐

遺産分割協議書の作成自体に期限はありませんが、相続税の納付期限が相続開始から10ヶ月以内ですので、そこがひとつの目安になる場合が多いですね。

権利関係は何が違う?

家庭裁判所に申請して相続放棄をすると、その放棄した相続人は「初めから相続人でなかったもの」という扱いになります。

相談者の方のケースの場合、相続放棄がなければ妻子供3人が法定相続人で、妻1/2、子供が(残り1/2を3人で分けて)それぞれ1/6が法定相続分ですが、子供2人が相続放棄をすると、妻1/2、相続放棄をしていない子供1/2となります。

あくまで法定相続分なので、実際にどう分けるかは残った相続人で自由に決められますが、折り合いが付かなければ法定相続分が各自の権利となります。

ちなみにもし子供3人とも相続放棄をすると、第2順位として亡くなった方(父)の両親が法定相続人となります。両親がすでに他界していなければ、第3順位として亡くなった方(父)の兄妹が法定相続人となります。

相続放棄をする場合は、このように権利関係が移り変わってくると言うことも考えておかなければいけないので注意が必要です。

相続放棄をせずに遺産分割協議で相続分をゼロにする場合は、本来の法定相続人以外、(亡くなった方の)両親や兄妹などへの影響はありません。

小宇佐
小宇佐

ただ、もうひとつ、相続放棄をした場合と相続放棄をせずに遺産分割協議をした場合とで大きな違いが出てくることがあります。

遺産分割後、別の財産が見つかった場合

相続放棄をしている場合は、放棄していない相続人でどう分けるかを考えれば良いですが、相続放棄をしていない場合は、もう一度本来の法定相続人全員で遺産分割協議をすることとなります。

問題なのは、後から出てきたのがマイナスの財産、つまり借金などの場合です。

この場合、相続放棄をしていればそのマイナスの財産を背負う義務もありませんが、放棄していない場合は違います。

良かれと思って受け取る財産をゼロにする遺産分割協議書にサインしたのに、借金を支払う義務は残ることになってしまいます。

プラスの財産を相続した人が「私が払うからいいよ」となれば良いのですが、金額次第ではそうならないこともありますよね。

またお金を貸している側(例えば金融機関など)から見ると、相続放棄をしていない場合は、法定相続人に対して法定相続分は「払ってくれ」という権利があります。

小宇佐
小宇佐

相続には権利だけでなく義務も発生します。

相続放棄をすると権利も義務も放棄することになり、放棄していない場合は権利も義務も残るということは、必ず知っておくべきですね。

相続放棄をする人がいる場合、相続税の額はどう変わる?

相続放棄をしても相続税の非課税枠(3000万円 + 600万円 ✕ 法定相続人の数)には影響してきません。

ややこしいですが、相続税の非課税枠は「相続放棄がなかったもの」として計算されます。

小宇佐
小宇佐

相続放棄をしたからと言って特別に税金(の総額)が高くなると言うわけではありませんので、そこはご安心ください。

相続についてのご相談は小宇佐・針田FP事務所にお任せください。

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小宇佐 拓宏

小宇佐・針田FP事務所代表ファイナンシャルプランナー。住宅マネープランナー協会代表。2001年早稲田大学人間科学部卒業後、マンションデベロッパー・損保系大手生命保険会社での経験を経て2010年小宇佐FP事務所として独立。2011年小宇佐・針田FP事務所に名称変更専門分野は投資・運用。自らもFXや米国株投資を積極的に行う。

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