パートで働く主婦の方からのご質問です。
私は現在、夫の扶養に入ってパート勤務をしています。
この時期になると、扶養の範囲を超えないように、パート時間を調整して働いています。
ただ先日知人から、老後のことを考えると106万円の扶養の範囲を超えたほうが良いと思うよと言われました。
でもそうすると私の給料の手取は減りますよね?
それをするメリットはあるのですか?
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2020年11月16日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
103・106・130・150万円の4つの壁
年末は扶養の範囲についてのご質問は多いです。
パート勤務の方が、扶養の範囲を超えないように勤務時間を調整し始める時期で、そもそも扶養って何?と疑問に感じる方も多いと思います。
年間幾ら以上の収入を稼ぐと扶養から外れますよ、ということが、よく「〇〇の壁」と表現しますね。
主に、103・106・130・150万円の4つの壁があります。
103は所得税住民税の壁、106は一部の人に該当する社会保険の壁、130はそれ以外の多くの方に該当する社会保険の壁、150は配偶者の税金負担が徐々に増える壁です。
今回はこのうち106万円の壁についてのご相談ということですね。
106万円の壁とは?
これは、次の条件を全て満たす場合に、社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入しなくはいけない、つまり扶養から外れますよ、というものです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金月額が8.8万円以上であること(年収換算で約106万円以上)
- 学生でないこと
- 従業員が常時501人以上の会社に勤めていること
この要件のうち、最後の従業員の規模について、2020年5月29日に年金制度改正法が成立したことにより、対象範囲が広くなりました。
2022年10月からは従業員101人以上、2024年10月からは従業員51人以上の中小企業まで適用範囲が拡大されます。
また2022年10月からは、2の条件における雇用期間が「1年以上」から「2ヶ月超」となります。
これにより扶養の範囲を外れる要件を満たす人というのは、かなり増えることが予想されます。
扶養を外れると、社会保険料の負担で手取が減る?
年収106万円程の人にとっては、健康保険と厚生年金保険料の負担で20万円弱の手取りが減ることになります。
この社会保険料の負担が大きいので、これまではこの壁を超えないように、106もしくは130万円以内で調整して働く人は多かったと思います。
ただ、先程述べたように今後はこの壁を越えやすくなることを考えると、人によっては思い切って扶養を外れて働いたほうが良いという考えもあります。
というのも、106万円の壁を超えて厚生年金に加入するということは、結果的にご自身の老後の年金収入が増えることに繋がります。
いま男女間での年金受給額にはかなり差がありますので、扶養を外れて厚生年金に加入することで、平均寿命の長い女性にとっては、老後の年金収入が増えることは良いことです。
仮に30歳のパート妻が、年収106万円程で厚生年金に加入し60歳まで仕事を続けたとすると、老後の年金受給額は年間17万円ほど増えます。
月にすると15,000弱の収入が増えるわけですから、結構大きいですよね。
年金収入の男女差はどのくらいあるのですか?
男性の平均受給額は、ひと月当たり約16万円、女性は約10万円です。
月額6万円(年間72万円)の差ですので、65歳から仮に90歳迄の25年で考えると、1,800万円もの受給額の差になります。
でも女性の方が男性よりも平均寿命は約10年長いですから、ご自身の年金額が少しでも増えるのは良いことです。
また年金収入が増える以外にも、傷病手当金を受け取ることができるようになります。
働けなくなった時の手当も受け取れる
病気や怪我で4日以上働けなくなったら、お給料のおおよそ3分の2を最長18ヶ月間、健康保険から傷病手当金という手当を受け取ることができます。
扶養の範囲内でパートをしている方が同じ理由で働けなくなっても公的な補償は無いので、これがもらえるようになるというのは、かなりメリットがあると思います。
そしてもっとひどい状態になった時の障害年金がありますが、これも障害厚生年金を受給できるようになります。
傷病により所定の障害の状態になった人に対して支給される障害年金は、国民年金でも厚生年金でも受け取れますが、国民年金の障害基礎年金の支給要件対象が障害等級1・2級に対して、厚生年金は対象の幅が広く、3級でも障害厚生年金が支給されます。
また3級に該当しない場合でも、障害手当金(一時金)が支給されるケースもあります。
公的な補償が手厚くなるというのは良い点ですね。こういった時の社会保障があるというのは、心強いと思いますよ。
働き方で何か工夫することはありますか?
仮に106もしくは130万円の壁を越えて働くことになると、どちらの場合にも社会保険料の負担と併せて所得税と住民税の負担をすることになります。
この所得税と住民税については、iDeCoを利用することで負担を減らすことができます。
iDeCoの掛け金は全額所得控除になるので、課税の対象となる金額分をiDeCoに投入することで納税額をゼロもしくはそれに近づけることができます。
厚生年金とiDeCoによる運用実績により、パート妻はこれまでよりも老後の収入を増やすことも可能だと思います。
専門家にも相談しながら、ご自身にとって良い働き方を見つけられると良いですね。詳しく知りたい方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。