介護制度についての方からのご質問です。
自分の両親が70代半ばとなり、特に父は昔よりも体は弱ってきているように思えます。
いまは亡き私の祖母は、生前介護施設に入所しておりましたが、もしかしたら父もそのようになるのではと、最近心配しております。
祖母の介護については、当時は父と母に任せてましたので、介護の制度や費用面については考えたことが無かったのですが、
いよいよ自分がその立場になると思うと、色々と知っておかないといけないと思います。
いまの介護制度について教えてください。
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2020年7月20日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
公的介護保険制度はどんな人が対象になる?
社会保障のひとつである公的介護保険制度ですが、これは40歳以上の方は全員が被保険者となります。
会社員の方ならおおよそ月額5,500円弱の保険料負担を、65歳以上の方も6,000円弱の保険料を納めていますね。
それにより、65歳以上で要介護認定を受けるか、40~64歳で特定の条件を満たした場合に、介護サービスに関わる費用が一部負担のみになる仕組みです。
特定の条件というのは、ガン・リウマチ・ALS・パーキンソン病・認知症・脳血管疾患など合計16種類の特定疾患で、40~64歳迄の方はこの16種の病気や障害に罹患した場合のみ介護サービスを受けられます。
今回のご相談者の親御さんは70代ということですから、この16種の疾病傷害の有無は関係ありませんね。
介護認定を受ければ、公的介護の補償対象となります。
介護認定の流れ
お住いの市区町村の広域連合が介護認定を出します。
介護認定を受けるための流れですが、まずは広域連合の担当窓口へ申請します。
本人か家族、もしくは介護支援事業者などに代行してもらうこともできます。
その際に必要なのが、「要介護・要支援認定申請書」「保険証」「マイナンバーカードもしくは通知書と本人確認書のセット」の3点です。
この申請をすると、広域連合の職員や調査の委託を受けた事業所が自宅などを訪問し、本人の心身の状態について調査を行います。
具体的には、家族の状況や本人の日常生活の様子など、全国共通の74項目について尋ねられます。
同時に主治医には、心身の状況についての意見書を作成してもらいます。以上をもとに介護認定審議会を経て、介護認定を受けることとなります。
ここで受けられた介護支援認定の有効期限は、新規の申請の場合は6ヶ月、その後の更新は12ヶ月ごとです。
もしくは心身の状態により新規申請及び区分変更申請は最大12ヶ月、更新申請は最大36ヶ月まで認められることもあります。
介護認定のレベル
要支援1・2、要介護1~5の7段階です。
要支援とは簡単にいうと、日常生活は自分で行うことができるが、多少の支援が必要な状態を言います。例えば、入浴は自分一人でできるが、浴槽の掃除はできないといった、具体的な生活支援が必要な状態です。
では要介護はというと、日常生活全般において自分一人で行うことが難しく、誰かの介護が必要な状態です。例えば、お風呂の時に身体を自分で洗えないために入浴介助が必要など、他者の支援が必要な状態です。
介護認定のレベルによって受けられるサービスが変わる
そのレベルに応じて、介護保険で受けられるサービス内容および介護料の自己負担額が変わってきます。
サービス内容でいうと、特に要支援と要介護の大きな違いは、介護施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設等)の利用の可否です。
次に自己負担額の違いですが、まずその前に、その方の所得に応じて「介護費用の自己負担率」が変わってきます。
年金生活者でしたら多くの方が1割負担ですが、2割負担する方というのは、65歳以上の方で合計所得が160万円以上の方です。
年収に換算すると、年金収入のみで280万円を超えると該当してきます。
3割負担する方は現役並み所得と言われる方で、合計所得が340万円以上です。
この所得(自己負担率)と、介護7レベルのいずれかによって、介護保険から支払われる介護保険金の上限額が異なる(自己負担額が異なる)という仕組みです。
例えば1割負担の所得層の方に支給される年間の限度額は、要支援1の年間60万円から始まり、あとは重くなるにつれ、125・200・235・323・369・432万円となります。
いま介護の現場での費用負担は?
一時的な費用と、その後も通年かかる費用があります。
公益社団法人生命保険文化センターの調査によると、一時的な費用として、住宅改修や介護ベッド購入に要した介護サービス利用後の自己負担額が、平均約70万円です。
その後の通年かかる費用として、介護サービス利用者の35%が月額自己負担額5万円未満、20%が月額5~10万円、全体の31%が月額10~15万円、残りの14%が他不明という結果で、全体の平均として約8万円が月額の自己負担ということになります。
この費用負担は、平均すると約60ヶ月必要と言われており、20年前と比べるとほぼ倍の期間と、年々長期化しています。介護利用者も長寿化しているということですね。
介護施設に入所すると、さらに費用は多くなる
介護施設の利用費用は、本当に様々です。
まず公的な施設として有名なのが特別養護老人ホーム(特養)ですが、民間よりも安く抑えられるので多くの方が利用を望みます。
しかし基本的に要介護3以上でないと入所できませんし、現在要介護3の方の入所待ち件数が約30万人にもおよびます。
都心と地方では入居率はかなり違うようですが、都心ではなかなか入所できない、とよく聞きますね。
気になる負担額ですが、最大のメリットが入居時の一時金が不要という点で、民間の施設だと数十万~数百万~数千万というところもありますからね。
月額負担は、本人とご家族の所得に応じて費用負担が軽減される仕組みがあります。
さらにお部屋のタイプが個室か4人部屋かにもよりますので、一律ということではないのですが月額8万円~13万円台というところが多いです。
いっぽうで民間の施設は様々な種類がありますが、10万円未満という所は恐らくないでしょうし、特養の1.5~2倍程するところが多いと聞きますので、年金収入だけでは不足することが考えられますね。
要介護になる原因の1位が認知症で全体の25%、2位が脳血管疾患で18%、3位が高齢による衰弱という厚労省の調査結果があります。
特に脳血管疾患についてはある日突然やってきますので、できることならご両親がお元気なうちに、もしいま介護認定を受けることになったら、どのくらいの費用をねん出できるのか、親子で話し合えるとよいですね。
介護保険について、詳しく知りたい方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。