通勤手当の税金についてのご質問です。
今年の春から職場の異動があり、これまでは車通勤でしたが電車通勤に変わりました。
職場には、通勤手当について申請をする書類の提出をし、基本的には通勤費は全額会社負担となります。
支給方法としては、まず定期券を実費で購入して、毎月の給料にその分が振り込まれるようになるそうですが、ここで質問です。
毎月の給料はいろんな税金が引かれるようになっていると思うのですが、通勤手当からも引かれるのですか?
もしそうなら、手取りで考えると損をする気がするのですがどうなんでしょうか?
教えてください。
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2021年6月7日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
通勤手当からは税金は引かれる?
所得税については原則非課税です。所得税法第9条第1項第5号では、「給与所得者がその通勤に必要な交通機関の利用または交通用具の使用に支出する費用として、通常の給与に加算して受ける通勤手当は非課税」と定められています。
ですので今回のご質問にある、「手取りで考えると損をするか」については、所得税においては損をしないということになります。
では通勤手当という名目なら、いくらもらっても所得税が非課税になるかというとそうではありません。
こちらも所得税法で、非課税金額の上限額が定められておりますので、ご注意ください。
通勤手当の上限はいくら?
金額については、ひと月最大15万円と、かなり高額な金額まで非課税として認められるようになっています。
では電車で職場から自宅まで一駅しかないのに、月15万円を貰っても非課税になるかというとそんなことはなく、「通勤に関わる運賃・時間・距離等の事情に照らし最も経済的かかつ合理的と認められる通常の通勤の経路及びその方法による運賃が前提」となっています。
ですので、会社に通勤費の申請を出す際に、「最短距離分の通勤費までを支給しますよ」という説明を皆さん受けていると思うのですが、これは決して会社がケチっているわけではないですからね。
あくまでも法律で非課税の範囲内で認められている分を、支給しますよということです。
では通勤手段が、車や自転車の場合はどうなる?
この場合は、自宅から勤務地までの距離に応じて非課税の上限が定められています。
2km未満は全額非課税、2~10kmは4,200円迄、10~15kmは7,100円迄、あとは10km刻みで細かく決められており、最大は自宅から職場まで55km以上の場合31,600円まで非課税と認められています。
ちなみに高速などの有料道路は別途と認められますので、この金額プラス高速代までが非課税と認められます。
詳細は国土交通省のページで見れるようになっています。
ただし、通勤手当の支給は法律で定められたものではないので、必ずしもこれの通りにする必要はありません。
一般的には、この非課税限度を超えない範囲で、会社ごとに社内規定に則って設定していると思います。
役職者などの年俸制の人はどうなる?
先ほどご説明した通勤手当が原則非課税となるのは、通勤費が「通常の給与に加算して受ける手当」であることが必要です。
いっぽうで年俸制の場合、通勤費も残業費も諸々含めたうえで年俸幾ら、と決められていることが多いと思います。
つまり、通常の給与と合算して支払われる年俸制の場合には、通勤費として含まれている金額についても課税対象になってしまいます。
この場合はすこし損をした感じはありますね。
テレワークの場合はどうなる?
コロナによる在宅ワークが始まりだした当初は、一時的なものだろうということで通勤手当を満額支給していた企業は多いと思いますが、さすがにこれだけ長く続いてくると、見直しを始める企業が増えてきています。
昨年の夏ころからそういう話題を耳にするようになりましたが、大手企業をはじめとして、通勤手当の見直し(減額等)および在宅手当の導入というのを始めていますね。
この在宅手当については、国税庁の見解では、光熱費やネット環境等の通常必要な費用を生産するための手当は非課税、という扱いになっていますのでご安心頂いてよいと思います。
社会保険料も非課税?
いえ、社会保険料については通勤手当は計算対象に含まれます。
社会保険料を算出する際に使う「標準報酬月額」というものには、賃金・給料・俸給・手当・賞与その他いかなる名称であっても労働者が労働の対象として受けるすべてのものをいう」という風に厚生年金保険法第3条1項1号に定められています。
よって通勤手当もそこに含まれるので、仮に新卒社員で同期でも、給与の手取りが違う人がいると思います。
通勤手当が多いほうが社会保険料負担が多くなるので、手当が少なくなります。
これは是正したほうが良いのではということで、過去に何回も国会で審議されたそうですが、毎回見送りです。
いっぽうで、標準報酬月額が増えるということは悪い話ばかりではなく、良い点もあります。
社会保険上の各種手当は標準報酬月額をもとに算出されますので、これが多いほうが手当も多くなります。
育休手当や傷病手当など、仕事を休む時にはメリットになりますね。
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