相続の制度改正についてのご質問です。
先日新聞で見たのですが、遺産相続について民法改正があるんですか?
配偶者権利が見直されると聞きましたが、具体的に何が変わるのか、教えてほしいです。
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2018年4月23日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
相続法改正でなにが見直されるの?
現在、法務省の法制審議会(相続の民法部会)のなかで、相続法改正について議論がされています。
まだ改正案の段階でいくつもあるのですが、もっとも大きな改正点は、死亡した人の配偶者が、相続開始時において居住していた建物に、その後も住み続ける権利「配偶者居住権」の新設です。
社会の高齢化を受け、配偶者の優遇、それが老後生活の経済的安定につながるという狙いのようです。
これが検討された背景は?
夫婦のどちらかが死亡した場合、残された配偶者はそれまで一緒に住んできた自宅にその後も住み続けたい、と望むことが多いですよね。
特に高齢者の場合、いまから引っ越すというのは大きな負担になります。
現在の法律では、遺産分割において配偶者がその建物の所有権を取得するか、その建物の所有権を取得した他の相続人との間で賃貸借契約等を締結することが出来れば、自宅に住み続けられます。
ここまでは当たり前のお話なのですが、ではなぜこの場面において民法改正が検討されているかというと、それは配偶者を優遇するためです。
配偶者の優遇とは?
そもそも遺産相続というのは、遺言があればそれに従い分割をします。
しかし、遺言がなければ、原則として民法が定める法定相続分をもとに相続人全員で協議をして分割する、協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に申し立てて結論を出します。
相続財産のうち、現金の割合が多ければ遺産分割は簡単なのですが、現金が少ないと、最悪自宅を処分してそのお金を分割するということにもなりかねません。
残された配偶者が高齢者の場合は、その年齢で住む家を失うわけですから、これは気の毒ですよね。
配偶者が自宅を相続できれば問題ないのでは?
残された配偶者自身が、自分名義の蓄えをもともと持っているなら良いのですが、そうでないと大変になることもあります。
たとえば4人家族の夫が亡くなったとして、法定相続人は妻と子供2人になります。
この相続財産が4000万円、うち自宅の評価2000万円、現金2000万円だとします。
これを法定相続割合通りに分割すると、妻は2000万円、子供たちは1000万円ずつを受け取ることになりますが、ここで妻が自宅を相続すると、その評価額は2000万円なのでこれで法定相続分の満額に達しますから、現金は受け取れません。
つまり住む家はあるけど、現金はほかの家族にいってしまい、自分の手元にはお金がない、なんてことが生じます。
これを民法改正により防ぐことが考えられています。
法改正の影響は?
「配偶者居住権」が新設されることにより、すこし分かりづらいですが、自宅の権利を「所有権」と「居住権」と分けて考えるようになります。
仮に自宅の所有件が配偶者以外のものへ渡ったとしても、配偶者は居住権を主張することで、自宅に住み続けられるようになります。
また、居住権の評価額は、配偶者の残りの平均余命から算出し、それは高齢であるほど低く計算されるようになります。
先ほどの例にあてはめると、4000万の相続財産のうち、配偶者が自宅の所有権を求めるなら、やはり自宅の評価額の2000万を相続することになり、残りの現金は受け取れませんが、ここで居住権を選択するなら、居住権の評価額が所有権を下回る場合は、残りの現金を受け取ることができます。
たとえば居住権の評価額が1000万円となれば、もともと4000万円のうちの2000万円が配偶者の法定相続分なので、このうち1000万を居住権として受け取ることになれば、残りの1,000の法定相続分は現金で、という選択もできるようになりますよね。
他にも改正がある?
簡単なところでは、たとえば自筆証書遺言は本来、全文自筆で記入しないといけいといけないのですが、パソコンを利用してよいことになります。
他にも、介護をした人は、相続人に対して金銭の請求権ができるようにもなります。
たとえば、義理の父親の介護をしたお嫁さんには、実の娘ではないために法定相続権がないのですが、生前の介護で苦労をした人が、なにも相続できないというのは気の毒だということで、遺産分割を受けた相続人に対して、金銭を請求できるようにしようという改正案もあります。
これらの改正により、救われる人と、逆にもめる火種となるケースと、様々だと思いますが、今後の動向に注目していきたいですね。
相続について、詳しく知りたい方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。