外貨建て保険についてのご質問です。
最近、ニュースで金融機関を窓口とした外貨建て保険でトラブルが増えているというニュースを見ました。
金融商品でのトラブルというと、高齢者がイメージされますが、意外に若い方のトラブルも有るとも聞きます。
保険が支払われないとかそういったトラブルではないようですし、私も加入しているので、どんなトラブルなのかを知りたいです。
教えてください。
私、針田がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2019年6月10日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
外貨建保険は人気が高い
ここ数年、各保険会社が特に力を入れているように感じます。
生命保険の多くは、もともと日本国債を運用の原資としていましたが、ご存知の通り超低金利の続くなかで、生命保険の利率も下がっています。
終身・養老・学資・年金など、積立型の保険は様々有りますが、数年前と比べると、軒並み半分以下しか利息が付きません。
例えば学資保険は、以前は掛け金の20~30%程が増えて手元に還ってきていましたが、最近はせいぜい3~5%程しか増えません。
年金保険も以前は掛け金の30~40%、高い時は50%以上増えましたが、これも最近は5~10%程度です。
そこでここ数年で増えてきたのが、外貨建ての保険です。
加入者が払う保険料を外貨に換えて運用することで、現状の日本国債中心の運用よりも利息が高いため、結果的に加入者へのリターンも多いということです。
外貨建保険には為替リスクがある
はい、外貨建て保険の通貨には、米ドル・豪ドル・ユーロが使われますが、例えば米ドルの場合、ここ10年の間で、為替レートは最大5割ほど変動しています。
皆さんも記憶に新しいと思いますが、数年前に1ドル70円代というかなり円高水準になった時もあれば、最近では1ドル120円半ばという時もありました。
1$80円の頃に100万円を米ドルに替えると、単純計算で100万÷80=12,500$になります。
これを1$125円の時に日本円に戻せば、12,500$×125=156万円になりますから、わずか数年で100万円が5割増えたことになります。
これに該当した方はOKなのですが、反面、1$125円の時に100万円を外貨に換えた方は8,000$、最近の為替レートは1$108円程ですから、いま日本円に戻すと86万円になってしまい、2割程損をしますよね。
こう考えると、外貨で運用するなら円高の時に始めればいいだけじゃないかと、単純な話になるのですが、ここに保険が加わることで、話が複雑になるんですね。
為替レート以外の要因
は外貨建ての保険は大きく分けて2種類あります。
毎月保険料を支払うタイプと、一括で支払うタイプです。
前者は加入者が支払う保険料を、毎月外貨に換えて積み立てていくタイプで、そこには何らかの保険が付いてくるのが一般的です。
死亡保障だったりガンの保障だったり介護の保障だったり様々ですが、例えば毎月100$を払うタイプなら、その数十倍~数百倍の死亡保険金やガンの保険金が払われるわけです。
少ない毎月の掛け金で、万が一の時には多くの保障を受けることができる、まさに多くの方がイメージする生命保険の形だと思います。
いっぽうで、今あるまとまったお金を一括で支払うタイプ、このタイプでのトラブルが特に増えています。
例えば1,000万円を一括で保険会社に支払い、それを外貨にかえて10年もしくは15年間運用をして、その利息を受け取るというタイプです。
利息の受け取り方は、毎年利息のみ受取るタイプと、契約の満期時に元本とまとめて受け取るタイプがあります。
こういう商品の多くは、先ほどのような保険が付いておらず、仮に契約途中で死亡すると、その時点で積み立てられている利息と、契約時に支払ったお金が戻ってくるという仕組みになっています。
加入者は保障を得るために加入するのではなく、お金を増やす目的で加入するわけですが、その商品が持つリスクを理解しないまま契約をすることで、トラブルが発生します。
これらの商品の多くに共通する特徴が、契約満了時には元本が保障されるという点があります。
利息を受け取って元本保証なら問題ないように思えますが、ここでいう元本はあくまで外貨ベースの元本のことですから、注意が必要です。
トラブルはどのくらい起きている?
一時払型の外貨保険は、市場規模を表す保険料収入で見ると、2018年度に4兆円程あり、5年前の約2.7倍にも膨らんでいます。
そして保険会社に寄せられた苦情の件数は、17年度には1,888件と、5年前の約3倍に増えているそうです。
そもそも一括で外貨に換えるということは、後々それを日本円に戻すときに、少なくとも当時よりも円安でないと為替差損が生じますよね。
為替の影響をもろに受けるわけです。
さらにこれらの商品には、外貨建商品独特の運用コストや、途中解約のペナルティなどがありますから、それらを理解しないまま、もしくは十分な説明を受けないまま契約をする方が、後々「そんなはずじゃなかった」というトラブルになります。
特に外債ではなく株式を組み合わせるタイプに注意が必要です。
株式を組み合わせるタイプとはどんな商品?
外貨建て保険には、外国の債権を中心に運用するものと、株式などを組み合わせて運用をするタイプがあり、後者は「変額商品」「特別勘定商品」という言葉を使います。
運用先に株式が含まれることで、将来のリターンが約束されないわけですが、それが魅力でもあり反対にリスクでもあるわけです。
為替の影響をもろに受けることに加えて、株式運用による損失が生まれる可能性もあるわけです。
でも、保険会社が提示する金利だったり、商品の仕組みがうまくその方にハマれば、メリットがあるわけですが、そのメリットとデメリットが契約者すべてには浸透していないのでしょうね。
これらの商品に加入する方の多くは、いま手元にまとまったお金がある人達です。
例えば退職金を受け取った方の多くは、銀行・証券・保険会社どこかしらの金融機関から、何らかのアプローチを受けていらっしゃるのではないでしょうか。
まずは「退職金専用定期」、これは銀行・地銀・信金の商品で、預入れ期間が1~6か月と短いものの、金利は2%程あったりと、一時的に預ける先として定番です。
そこに投資信託やNISA口座をセットにして開設することで金利上乗せがあったり、年金の受取口座の条件を設けるところもあります。
そしてその後に金融機関からのアプローチとして出てくるのが、投資信託や今回の一時払型の外貨建保険です。
今すぐに必要なお金ではないから、多少のリスクを負ってでも増やしたいという気持ちになるのでしょうが、
メリットとデメリットを天秤にかけよう
これは外貨建保険に限りませんが、為替はこのわずか10年で5割も動いているということ、金融商品には基本的に途中解約には何らかのペナルティがあること、こういう基本的なことを抑えたうえで、メリットとデメリットを天秤にかけてください。
特に大きなお金を一度に支払うタイプの商品を選ぶなら、よく理解したうえで始めてください。
外貨建て保険について、詳しく知りたい方は小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。