不動産投資についてのご質問です。
最近、不労所得とかFIREとか働かずに収入を得るというようなことを目や耳にする機会が増えた気がします。私は今は普通に仕事をしていて、老後に不自由なく暮らせるくらいにはお金を貯めたいと思って頑張って働いています。ただ、最近知人が不動産投資を始めたと聞いて、少し気になっています。このまま普通に働くだけではなく、不動産投資など取り入れた方が良いのでしょうか?教えて下さい。
私、伊藤がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2021年11月29日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
不労所得とは
不労所得は言葉通り働かずして所得を得ることを指します。
最近ではFIREという言葉を聞く機会が増えたとは思うのですが、これは早期リタイアのことを指します。
「Financial Independence, Retire Early」の略称です。
資産運用による経済的自立を目指していて、若いうちに働いて投資元本を蓄財し、運用益で生活できる目途が立った段階でリタイアするというものです。
いずれも、一生懸命働いて老後を迎えるというイメージからは離れますね。
先ほどの不動産投資もこれに当てはまる?
イメージとしては当てはまりそうですね。
不動産投資といっても細かく分ければ色々あると思いますが、その中で、アパートの大家さんを思い浮かべる人は多いと思います。
みなさんの周りにももしかしたらいるかもしれませんが、大家さんは毎月家賃収入が入ってくるので、楽して生活しているというイメージがあるかもしれません。
実際にそのような大家さんは世の中にいらっしゃると思います。
ただ、不動産投資をする人すべてがそうかと言えば、決してそうではありません。
不動産投資で問題になった事例
有名なのが「かぼちゃの馬車」の投資トラブルですね。
これは、そもそも不動産投資ができるほどの資産がない人たちが、実勢価格より高値のシェアハウスをフルローンで購入したものの、運営会社が販売時に説明した家賃では入居者が集まらず破綻し、オーナーの手元には収益性が低いシェアハウスと多額の借金だけが残ったというものです。
融資した銀行も、シェアハウスの購入契約を結んだオーナーさんに融資する際、審査を通りやすくするため顧客資料を改ざんするなど不適切な融資を行ったことで、2018年10月、金融庁から6カ月の不動産投資向けの業務停止命令を受けたというものです。
なぜこのようなことが起きた?
大きく4つのポイントがあると考えられます。
1つ目は、マイナス金利の影響です。
2016年に日銀がいわゆるマイナス金利を発動したことにより、金融機関はより一層融資に力を入れざるを得なくなったのですが、そこで目を付けたのが担保が取れる不動産投資への融資でした。
特に、安定収入があるサラリーマン向けに力を入れていたようです。
2つ目は、長寿化です。
長寿化により老後の生活への不安が高まり、その不安を解消すべく、別の安定収入を求めたい人が増えたと考えられます。
3つ目は、不動産投資が身近になったということです。
昨今ではSNSなどを通してあらゆる情報が簡単に手に入るようになり、不動産投資についてもそれは同じです。
目や耳に触れる機会が増えたことで、自分にもできるのではないかという意識になる人が増えたと考えられます。
4つ目は、サブリースという仕組みの存在です。
これは、運営会社等がオーナーさんから1棟丸ごと借り上げることで、オーナーさんは運営会社等に家賃から一定の費用を支払う代わりに、収入を保証してもらえるというものです。
サブリースの問題点
結局、保証をしているのは民間会社であり、その会社も家賃が約束通り入ってくるか、その他で相当の余力があるかでないと、オーナーさんへの保証が継続できなくなってしまいます。
オーナーさんは金融機関でローンを組んで投資しているケースが多いため、もし、保証されているはずの収入が入ってこなくなれば、ローンの返済もできなくなることになってしまいます。
「かぼちゃの馬車」のケースは?
金融機関側の書類の改ざんというのはもってのほかですが、この家賃保証をしていた会社が関わっていた物件が、全体としては入居率が30%台であったようです。
入居率がずっと100%というわけではありませんので、ある程度の空室リスクは考慮していたと思いますが、30%台というのは当然想定外であったと思います。
このような状況でオーナーさんへの保証を満額継続するというのは余程のことがなければ不可能だと思います。
結果として、オーナーさんのローン返済の延滞、破綻につながることになりました。
不動産投資で注意するポイントは?
まず、そもそもなぜ不動産投資をするかという目的を明確にすることが重要です。
何となく楽して儲かりそうだからという安易な発想は、先ほどの「かぼちゃの馬車」のケースのように陥る可能性があります。
また、どの世界もそうですが、本当に良いものというのは、多くのみなさんの元に情報が来るという時点で、それまでに専門家の間で買い手が付かなかったというものが多いです。
そういったものの中にも良いものがあるかもしれませんが、なぜ買い手が付かずに残っているかという視点を持つことは重要だと思います。
想定利回りなどに注意が必要
詳細は省きますが、よく広告に載っている想定利回りは設定している家賃でずっと満室であった場合などの数字になっていることが多いです。
でも実際にはその家賃でずっといける保証もなければ、満室であり続ける保証はどこにもありません。
また、不動産投資をする際には契約時にかかる仲介手数料や広告料、管理会社に委託すれば管理費、設備の故障や建物の老朽化の際には修繕費、その他固定資産税や火災保険料など、ローンの返済以外にもかかる費用があります。
もし不動産投資をしようとなった場合には、単純に毎月いくら収入があるという視点だけではなく、総合的な視点を持った上で検討して頂くと良いと思います。
不動産投資についてのご相談は小宇佐・針田FP事務所にお任せください。