夫婦間の不動産贈与での配偶者控除はどうするべき?FPが解説

夫婦間の不動産贈与 マネー情報

夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除についてのご質問です。

まだ夫婦とも60代ですが、最近相続対策のことを話し合っています。と言うのも所有財産を全て合わせるとおそらく相続税が掛かるであろうと思われるからです。
調べていく中で、配偶者に自宅などの不動産を贈与する場合、2000万円まで非課税になる制度があることが分かりました。
現在私(夫)の名義である自宅の土地を妻に贈与することで相続税対策になるのでしょうか?
ちなみに家族は夫婦と子ども一人、孫一人。私の財産は自宅不動産が約2000万円、それ以外の預貯金などが5000万円。妻の財産は預貯金等で2000万円くらいです。
贈与した方が良いかどうか、デメリットはあるのかなど教えていただけないでしょうか

小宇佐
小宇佐

私、小宇佐がお答えします!

※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2021年11月1日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。

夫婦で自宅不動産を贈与すると贈与税が掛からない?

小宇佐
小宇佐

この制度は正確には「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」と言いまして適用するためには、いくつか条件があります。

①適用できる対象
◇自宅など「居住用の不動産」を贈与した場合
◇居住用の不動産を購入するための金銭を贈与した場合

土地のみ、建物のみの贈与も可能ですが、土地のみの贈与の場合は、夫、妻または同居の親族が建物を所有していることが必要です。

②非課税となるのは2000万円まで

③結婚から20年以上経過している

小宇佐
小宇佐

この「結婚して20年以上」と言う条件があるため「おしどり贈与」と言われたりもします。

④同じ夫婦の間では1回限りしか使えない

⑤贈与税の申告期限(翌年の3月15日)以降、引き続き贈与された自宅に居住していなければならない

以上のような条件があります。

(この控除を適用する場合)贈与税の納付税額がゼロであっても贈与税の申告は必要となる点も注意が必要です。

通常は2000万円に対して贈与税はいくら掛かる?

何も適用しなければ695万円の贈与税を払うことになります。

小宇佐
小宇佐

その点ではかなりお得となります。

旦那さんから奥さんに生前に自宅を贈与することがベストな方法ではない?

正にその通りで、財産の総額や内訳、家族構成(相続人)や更に最終的に誰に引き継がせたいかなどで全く異なってきます。

この制度は質問者の方のように相続税対策として使おうとする方が多いのですが、思ったほどの効果が無いのが実情です。

効果がない理由は?

まず、そもそも夫婦間の相続では最低でも1億6000万円まで(または法定相続分まで)は相続税がかかりません。

それなりの資産家の方でないと夫婦間での相続税支払いは気にしなくて良い場合が多いです。

小宇佐
小宇佐

また相続のときには夫婦間であれば「小規模宅地の特例」と言って自宅の土地は330㎡まで「8割減評価」となるので、この点でも夫婦間の自宅の相続はかなり優遇されています。

もうひとつは不動産を取得するとコストが掛かることです。

そのコストの中でも比較的金額が大きいのが不動産取得税と登録免許税なのですが、この2つは贈与時と相続時で税率が違います。

登録免許税は、相続時には0.4%ですが、贈与時には1%と5倍になります。

不動産取得税に至っては、相続時にはゼロ、贈与時には1.5〜3%程度となり、本来掛からないものを払うカタチになります。

仮に2000万円の不動産の贈与を受けると少なくとも数10万円のコストが掛かります。

小宇佐
小宇佐

このコストに見合うだけの効果があれば良いのですが、先程のお話の通り夫婦間の相続税はそもそも気にしなければいけないケースは少ないので手間や贈与税の支払い分損をしてしまう可能性すらあります。

どんな場合にこの制度を使うんですか?

余り役に立たないような言い方をしましたが、当然メリットもあります。

①通常は、相続発生の時から10年以内の生前贈与財産は相続財産に足して(持ち戻して)相続税を計算する必要があります。

これを特別受益の持ち戻しと言うのですが、この夫婦間の居住用不動産の贈与分については、2019年7月より持ち戻ししなくて良くなりました。

つまり2000万円までですが、自宅は配偶者に先に渡して、残りの財産を相続対象財産とできることになり、配偶者の相続分を実質増やすことで生活資金の確保などがしやすくなりました。

②また別のメリットとして自宅を購入するための金銭を贈与する場合があります。

小宇佐
小宇佐

例えば夫の持っている現金を妻に移せること、現金で不動産を購入することで一般的には評価額が下がるという効果があります。

夫婦の場合、どちらが先に亡くなるか分からないので判断が難しい

両方の場合を想定した対策を取れれば良いのですが、バランスを取るのはとても難しいと思います。

相続税が多く掛かるような場合は、夫婦の財産を平準化する方がトータルの相続税は少なくなる場合が多くなります。

小宇佐
小宇佐

と言っても相続税の計算は複雑なので、専門家に個別相談されることをオススメします。

相続税についてのご相談は小宇佐・針田FP事務所にお任せください。

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小宇佐 拓宏

小宇佐・針田FP事務所代表ファイナンシャルプランナー。住宅マネープランナー協会代表。2001年早稲田大学人間科学部卒業後、マンションデベロッパー・損保系大手生命保険会社での経験を経て2010年小宇佐FP事務所として独立。2011年小宇佐・針田FP事務所に名称変更専門分野は投資・運用。自らもFXや米国株投資を積極的に行う。

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