空き家の売却についてのご質問です。
先日母が亡くなりました。父は既に他界しており相続人は私だけなので実家を相続することになりました。ただ自宅は分譲マンションを購入済みで今さら実家に引っ越すつもりもないので、このままだと空き家になってしまいます。古い家なので賃貸に出すことも難しそうですし、取り壊して駐車場にするのも管理の手間がかかるので、売却しようと考えています。ちなみに売却金額はほぼ土地のみの値段で1500万円くらいになりそうです。購入額は分かりません。
空き家の売却は税制面で優遇されると聞いたことはあるのですが、具体的にはあまり分かりません。
この状況で税金が掛かるのか、掛かるとしたらいくらくらい掛かるのか教えてください
私、小宇佐がお答えします!
※CBCラジオ「北野誠のズバリ」で2019年9月2日放送されたテーマを記事にしております。
※ラジオ出演時のFPと本記事で解説するFPが異なる場合があります。ご了承ください。
※ラジオ放送時の法律・税制に基づいておりますので、記事閲覧時と異なる場合があります。ご了承ください。
空き家の売却の優遇措置はある?
不動産を売却したときの利益は「譲渡所得」と言います。この譲渡所得がプラスのとき、つまり利益が出たときは、その利益分(譲渡所得分)に対して所得税と住民税が掛かってきます。
5年以上所有している不動産の場合は、この所得税と住民税を合わせて20%の税率となります。(復興所得税も含めると20.315%)
購入価額が低い、または購入価額が分からない場合が問題
利益が多いほど支払う税金も高くなるのですが、親が若いころに建てたような古い物件を売る場合に問題になるのは、購入価額が低い、または購入価額が分からない場合です。
物価や何十年も前だとそもそも物価も違うでしょうし、いくらで買ったか証明するような書類も残ってないことが多いですよね。
購入価額が低い場合だと、当然売却したときの利益が大きくなり、その分税金も高くなります。
例えば、40年前に1000万円で購入した家を3000万円で売却した場合は、その差額は2000万円。実際には「取得費」や「譲渡費用」、分かりやすく言うと「買ったときの費用」や「売ったときの費用」も差し引かれるのでもう少し減りますが、ほぼそれに近い額、2000万円に対して税金が掛かってきます。20%だとすると400万円になりますよね。
また、購入価額が分からない場合はどうなるかと言うと、住宅を売却したことで得たお金の5%相当が取得費ということになります(概算取得費という)。
先ほどのように3000万円で家を売却した場合、その5%の150万円が取得費となり、利益は2850万円と計算されます。税金も諸費用等を考慮しないとすると税率20%として570万円となります。
税金の影響で空き家の増加が問題に
この税金が足枷となり、売却せずにそのまま放置され、空き家になるケースがありました。
空き家の増加はご存知の通り社会問題になっており、これ以上増やさないようにするための一環として国は税制上の優遇制度を作りました。
相続で取得した、被相続人の自宅を売却した場合には、一定の要件のもとに、売却の利益から3000万円を控除するという制度です。
利益が3000万円までであれば、税金はゼロになりますし、それ以上の利益が出た場合でも3000万円を引くことができるので、大幅に税金を減らすことができます。
もともと自宅を売却した場合には、売却の利益から3000万円を控除するとする制度はありましたが、これは自宅として住んでいる本人が売却した場合の制度です。
これが2016年から、相続した親の自宅にも適用されるようになりました。
税金が安くなるため売りやすい
先ほどのように3000万円で売却した場合は、そもそも3000万円引くことができるので、いくらで購入したのか分からなくても利益はゼロとなり当然税金も掛かりません。
5000万円の利益が出た場合でも、この制度を使った場合と使わなかった場合の差額は、概略で600万円(1000万円-400万円)となるので、かなり大きな違いとなります。
利用条件は?
この制度の要件は非常に細かくなっていますので、使おうとする場合は注意が必要です。
①昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
この日付以降は、耐震基準が大きく変わりましたのでその兼ね合いです。
基本は建物は取り壊して売却(譲渡)するのですが、残したまま売却する場合は建物を耐震基準に適合させる必要があります。
②区分所有建物登記がされている建物でないこと。
原則は所有している一軒家と言うことですね。
③相続の開始直前において被相続人以外に居住している人がいなかったこと
親がひとりで住んでいて、引き続き住む人がいない、という想定です。
ただし、要介護認定などを受けて老人ホーム等に入所していた場合は、要件を満たせばこの制度は問題なく使えます。
④相続開始後3年を経過する年の年末までの譲渡であること
今年相続したものであれば、2022年の12月31日までの売却までです。
⑤相続のときから譲渡のときまで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
つまり相続後に事業用や賃貸用などで貸したりするとこの制度は使えなくなります。
⑥譲渡の対価が1億円以下であること
1億円を超すような物件には適用されません。
⑦親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
(特別の関係には、生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれる)
空き家の売却でメリットが大きい
項目は多いのですが、空き家の売却と考えるとハードルはそれほど高くないと思います。
築40年以上経っている親がひとりで住んでいた親所有の一軒家、と考えると分かりやすいですね。
適用を受けるためには、各種提出書類もありますので、事前に市町村や税務署に確認しておいてください。
空き家の相続やお悩み事がございましたら、小宇佐・針田FP事務所にご相談ください。